手放してしまうかもしれないから、という理由で急遽これを書いている。
説明不要なくらい定番のスタジオ向けラージダイヤフラム・コンデンサーマイク、Neumann U87の二世代目にあたる。
Neumannでは60年代に真空管マイクのU67から半導体マイクのU87にフラッグシップモデルを世代交代した。初代のU87は出力コネクタがまだドイツ製の独自規格Tuchel製コネクタで、一般的なXLR型コネクタが直接接続することができず、変換コネクタとセットで販売されていた。
この第二世代のU87iでは標準で本体側もSwitchCraft製のXLRコネクタになっている。それ以外はまだ大きな変更点はない。
現行のU87Aiとの構造的な違いは大きくふたつ。
ひとつは、このU87iまではバッテリー駆動ができるようになっている。
これは専用の22V電池を2本使用して内部電源とするものだ。
ファンタム電源が使用できないマイク単独の環境でも使用できるという機能だが、2026年現在このバッテリーは入手困難で事実上使えない機能となっている。バッテリー内蔵スペースはU87Ai以降は廃止された。
もうひとつは、昇圧回路の有無。
現行のU87Aiではバッテリーのスペースが廃された代わりに、ダイヤフラムにより高い電圧をかけて感度を高く、出力が大きく取れるような構造になっており、その内部電圧を生成する昇圧回路が追加されている。
このU87iではそのような回路はなく、シンプルに外部供給されたDC48Vをフィルターでドロップした低い電圧をダイヤフラムにDCバイアスしている。
この構造の違いが、かなり音色に影響している。
U87iの音色は控えめでナチュラルなのに対してAiはクリアで明るく、パワフルに聴こえる。
このキャラクターの違いは大きく、個人的にスタジオでもよく見かけるU87Aiの音色はあまり好きではなかった。歌い手によっては、ギスギスとシビランスが目立ち耳障りな帯域が目立ってしまう。特に女性ヴォーカルだと全体的に明るくなり過ぎてしまうと感じることが多かった。
それに対してU87、U87iは地味ながらも高域が自然で、Neumannらしい存在感とスムースさが兼ね備わっており、真空管マイクであるU67やM49とも違う独自の“旨み”のようなものをもっていると思う。
ヴィンテージから現行品のあらゆるマイクを経験したうえで、結局このマイクに戻ってきたけれどこの安心感は他の何にも代えがたい。Neumannがなぜ未だに定番として愛されるのか、ヴィンテージが良いとされてきたのか実感できるマイクもである。
自分の所有しているU87iはシリアルナンバーから推測すると恐らく1979年頃の製造。
いまとなっては立派なヴィンテージ・マイクになってしまったが、非常に良い状態を保っている。
かつて働いていたレコーディング・スタジオでは通年して酷使されるあまり15年で2回もカプセル交換したU87Aiもあったが、これはオリジナルを保ちつつダイヤフラムにもダメージが殆どない。
筐体も古いNeumannはニッケルメッキが劣化しやすいがこの個体はかなり綺麗なまま当時とそう変わらない姿を維持している。
誇張なく日本国内にあるU87のなかでもトップクラスに状態が良いと思う。
最近は自作したU67クローンの出来があまりにも良く、仕事でもそっちばかり使ってしまってあまり出番がない。
もし自分のなかで役割が終わりつつあるのならば、誰かにまたこれを託して使っていって欲しいという気持ちも少し出てきている。
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| 古いU87の指向性切り替えボタンは、カージオイドがハートマークだ。かわいいね! |


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