2021年2月19日金曜日

ちょっと小さいベースを作ろう・完成編

ここまでの経緯↓

(前回) 材とか部品の選定

(前々回) 設計と基本構想


そんなこんなで、2020年の9月に僕の新しい楽器がついに完成しました。

つまりこのエントリを書いているだいぶ前に完成していました。まあ実際に使ってみたり、後からいじりたい所が出てこないかチェックしていたりだとか、単に別の仕事に追われていてブログ書く時間がなかったので…。



現物がこちらになります。


Tiny Flower5


塗装に花から取った染料を使ったのでTiny Flowerと名付けました。

(もしかしたら今後4弦バージョンを作るかもしれないので、便宜上Tiny Flower5と呼んでおきましょうか)


以下スペック。

ネック:メープル

指板:ローズウッド

ナット:アフリカンブラックウッド

0フレット幅:44mm

ネックエンド幅:70mm

ネックスケール:812mm (=32’’)

フレット数:0+22F

ペグ:Hipshot Ultralite 1/2’’Y Key

ブリッジ:Hipshot B Style (Aluminum 17mm pitch)

ボディ材:アッシュ単板ワンピース+スプルース、50mm厚セミホローボディ

ピックアップ:Aguilar AG-5P/J-HC

コントロール:2V1T + 3way switch (mute/normal/high cut)

重量:3.12kg

塗装:硝化綿ラッカー100%

染料:シネラリアの花、和服染料



ヘッド部分。木製ナット付き


この世で唯一の、自分のためだけに設計された楽器です。

完成した直後、初めて弦を張って弾いたときに限りなく想定していた通りの音色・演奏性になっていたので一周回ってびっくりしませんでした。そのくらい自分にとって自然だったということです。

通常より2''(50.8mm)短い32''(=812mm)スケールは左手のストレッチを軽減しつつ、ソフトでしなやかな低音が鳴ります。またアッパーホーンが長いボディシェイプの工夫によりローフレットが身体に近い位置に来るので演奏性を高めています。総じて左手も、右手も楽です。

世間のショートスケール楽器と違って専用弦は要りません。ロングスケール用の弦が使えます。



バックのスプルースは別の色になっている

特筆すべきはライトアッシュ&セミホローボディによる恩恵で重量がなんと3.12kg多弦ベースでも最軽量級ですが、ストラトキャスタータイプのギターでも3.2〜3.5kgくらいなので一般的なエレキギターよりも軽いということになります。

ボディはホロー部分の容積を稼ぐ目的で50mm(アッシュ47mm+スプルース3mm)という超極厚のボディになっていて、効率よく共鳴胴&バックのスプルースが鳴ります。アンプラグドで十分練習ができほど生鳴りが大きい。

また構造上トップ、バック共にコンター加工はなし。ボディエッジのR加工もテレキャスターと同じ3.5Rで削っているので全体的にフラットで少し角ばっています。かといって弾きにくいということはなく、むしろ座奏時にはボディが厚いおかげで非常に安定します。良質なクラシック・ギターのようです。




ちなみに今回結局人の手をお借りしまして、CNCによる切削オペレーションおよびボディ・ネックの成形はHumpback Eng.の戸田さんにお助けいただきました。特にネックの造形では自分も経験的にまだ知見が浅いところもあり、色々とアドバイスして頂いたおかげで非常に良いものに仕上がりました。感謝申し上げます。(フレットワークが見事です)

材の研磨、塗装、電気系組み込み、仕上げと他のフローは自分で行いました。




塗装は言うまでもなく、すべて自分で手がけた100%ニトロセルロースラッカー塗装。

ボディーはアッシュの質感を活かすべく、一般的な顔料を使ったカラー塗料ではなく木材自体に着色する木地着色にしました。


シネラリアの花

着色に使う染料は昨年ベランダで育てていたシネラリアの花を煮詰めて取った青色と、和服染料の紫をミックスして使いました。ぱっと見汚い塗装ですが、光を当てると青から紫にフェードしているのが分かると思います。またバックは青色だけで塗って、裏と表で違う色合いになっています。

サイドあたりの仕上げがちょっと使い込んだようにヤレてるのは最初から意図的にそうしたもので、すぐにキズものになっても気にならないように…という配慮だったりします。

塗装は市販品と比べ物にならないくらい薄くて、0.01mmくらいだと思います。言うまでもなくサンディングシーラーなしの塗膜なので、触れると木材の質感がはっきり分かるレベル。アッシュだと導管を目立たせるためにシーラーで埋めた後に塗装することが多いですが、それらとは真逆の仕上げですね。


Aguilar AG5P/J-HC


肝心の音ですが、トラッドな部分とモダンな部分、あとホローボディ特有の音色がミックスされていて…非常に説明しづらい音色です笑 ただ言うまでもなくショートスケールだからといって音が軽くなったりという印象はないですね。Low-Bも十分に鳴る。(現在はHigh-Cで使用)

初体験だったAguilarのPJセット、AG-5P/J-HCはやや癖のある音ですが、トータルではなかなか良い感じです。

たとえばDimarzioのPJセットDP126は唸るような低音とゴリっとしたローミッドで野太い音色ですが、それと比べると全体的に明瞭でスッキリしています。ただブライトな音色かといわれるとそうでもありません。クリアーでありつつオールドっぽいローミッドも出つつ、少し掠れた感じのトレブルもありつつ…という、まあ一言で言うとAguilarの音なんですが笑

2つのピックアップをそれぞれインプレッションすると、フロントのPは太くソフトです。中域の押し出しはFenderやDimarzioほどにないしろ適度にあり、埋もれる感じの音ではないです。高域はちょっと控えめかなという感じ。ただパワーは十分にあり、単体で使う場合でも音圧感があるので非力な印象はありません。

リアピックアップはいわゆるハムキャンセリングJピックアップになっていて、中身は2つのコイルに分かれたスプリットコイルになっています。なのでリア単体で使ったときに位相がぶつかったりノイズが増えることはありません。リアも似たような印象で、単体・ミックス時もジャズベースやBB5000と比べるとゴリゴリ感は少なく優しめの音です。(まあこれは本体の音も多少混じってるとは思います)高域は軽くパキっとした音色で、アンサンブルでよく抜けてきます。

外で演奏するときはフロント10に対してリア6〜7くらいのミックスで使うことが多いです。アンサンブルではブリっとしたミドルをある程度出したいのでフロントメインで、必要に応じてリアを足していく…といったような使い方。リア寄りで使う場合は後述のハイカットスイッチを使うことが多いです。


コントロール部分

コントロールはパッシブで2つのピックアップを2つのボリュームでミックスする2V1T方式。バランサーにしなかった理由は2つのPUバランスをクロスするポイントが2ボリュームのほうが好きなので。長くFenderで慣れ親しんだものですしね。

ただ2V1T方式だとPUのミックスバランスを維持したまま楽器本体で音量を0にしたいときに困ります。なのでトグルスイッチでミュートできるようにしています。

このトグルスイッチは3点スイッチになっており、アップ状態だとミュート(信号をGNDにショート)、真ん中でノーマル、ダウンすると並列に繋いだ0.022uFのコンデンサーとGNDがショートするようになっており、ハイカットのプリセットスイッチになっています。

メインのトーン回路は0.047uFのコンデンサーと250kポットによるハイカットですが、それに比べて0.022uFでハイカットする場合はカット周波数が高いのでミドルが残ったコリっとした音になります。これがリア寄りで弾くとき…主にセッションなどでソロを要求される場面や、メロディックなことをやる際に重宝していますね。

あと勿論アウトプット・ジャックはトップマウント。サイドにジャック付けると座って弾く時邪魔にしかなりませんから。



とりあえず現時点で説明できるのはこんなところでしょうか。

実際1から自分のアイデアで組み上げた楽器ですが、よく出来ていて、現状98%くらいは満足しています。

残りの2%は…??というのは今後ブログに書くとしましょう。

今後はコイツのセッティングを詰めつつ、似た仕様でソリッドボディ版も製作したいなと考えています。これを作ったことでさらなるアイデアが次々に湧き出てくるので、試したいことは山程あります。

現在はセッションライブ的な場面で使うことが殆どでまだレコーディングでは未使用なので、これからより使い込んでいくことになると思います。ひとまずおしまい!


(2/21 追記)

この楽器でヤネクのLight Yearsを弾きました。

リードトラックがフロント6リア10、バッキングはフロント10リア7くらいで演奏してます。EQはしてません。コンプだけLogicでうすーく掛けてます。ソロが全然弾けてないのは目をつむって!


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