2020年12月7日月曜日

D級ベースアンプヘッドの自作

ベースアンプヘッドを作るか…、と思い1年近くが経っていました。


自分はAguilarの12インチキャビネット(スピーカー)GS112を持っていて、それにVestaxの古いパワーアンプに繋ぐことでベースアンプとして使っていた。これがなかなか良い音がするので、特に不満はもっていなかった。

しかしVestaxのアンプはここ一ヶ月でボソボソというノイズや音割れといった不調が起きるようになっており、新しい試奏用アンプを用意する必要性が出てきた。

新品のアンプヘッド買うのが手っ取り早いが、やっぱり良いと思う製品は高い。以前スタジオでよく使っていた同じAguilarのヘッドアンプToneHammer500はお気に入りのヘッドであるものの、新品を買うと約9万円と昔のアンプではないにしろ安くはない。無論中古で購入は耐久性の面で難があるので却下。

となると、安く良いものを手に入れるにはオレがアンプ作るしかないと思うようになりました。



・D級アンプについて


今回製作するのは以前モニタースピーカー用に作った電流帰還アンプのようなAB級アンプではなくD級アンプです。世間ではデジタルアンプなんて呼ばれていますが、実態はPWM変換を応用したスイッチング・アンプで、A/D変換をしている訳ではない。メリットとしては電源一体型なのでローコストかつ電流効率が良いので小型で大出力を得られるメリットがある…というのは周知の通り。(詳しい動作原理は解説しているオーディオ系のサイトがあるのでそちらを参考にしてください)

近年台頭している小型&大出力アンプヘッドはほぼすべてこのD級アンプを搭載したものであり、D級アンプは自社設計ではなくD級アンプのデベロッパーからモジュールとしてOEM供給されているものです。

逆にいえば、D級アンプモジュールを入手してしまえば自分でもD級アンプが楽に作れてしまうということになります。

ということでまずはアンプモジュールを入手します。

・D級アンプモジュールの入手


D級アンプのデベロッパーはいくつかありますが、すべてのデベロッパーが表向きにモジュールの販売をしてくれる訳ではありません。メーカーや取引先として情報を登録しないとモジュールや資料を売ってくれないところもあります。(おま国もある)

ICE power 50ASX2
ICE power 50ASX2


今回採用したのはICEpowerというデベロッパーのモジュールです。特に楽器用アンプにおいては多くのアンプメーカーが採用していることで有名です。前述のAguilarのヘッドアンプもこのICEpower製のパワーアンプモジュールを使っているし、入手性が良かったのと値段がお手頃だったので某大陸系ECサイトでさっそく取り寄せました。

その後、待つこと2週間ほどでモジュールは到着!!



・資料を見つつざっくりとプリアンプの設計


ICEのウェブサイトにある解説pdfを見ながら、どういった動作をするのかチェックをしつつアンプの構想を練ります。

ちなみに言うまでもないですが、アンプモジュールの入力はラインレベルのインピーダンスなので、ギターやベースを直接つなぐことはできません。なのでバッファは必須。前段にプリアンプ的なものを付ける必要性がある。

今回は自宅での試奏リファレンスにしつつ、シンプルなパワーアンプに仕上げたかったのでパワー段の前はバッファーと電圧増幅段のみのプリアンプにすることにしました。コントロールはボリュームのみ、EQなしという男の仕様です。逆にここにEQやトーンコントロール系を装備させると普通のアンプヘッドと同じようなものができますね。

プリアンプはバッファー>電圧増幅段の後にパワーアンプをBTL駆動させるための反転アンプを入れてバランス出力にします。自分が今回買ったモジュール50ASX2は50Wシングル出力*2chという構成になっており、片方の位相を入力で反転させれば1chのBTL出力となる算段。

BTLするとパワーは倍になるので、maxは約170W/4Ω。うちのキャビネットは8Ωなので実際のパワーは100W相当ですが、自宅使用がメインなのでまあ全く問題はありません。

なおプリアンプの電源は別途用意することなく、パワーアンプモジュールから+-25Vのパワーサプライ端子が出ています。これをレギュレータで降圧してプリアンプの電源とすることができます。非常に便利。


・プリアンプ基板の製作と組み込み


プリアンプの回路はサクっとKiCADで製作し、eleclowに基板を発注しました。

プリアンプ基板です


そして基板は更に待つこと10日ほどで到着!

実装もさっと済ませ、さっそくケースにモジュールとプリアンプを組み込んでいきます。

ケースはリードのSK-180を採用しました。加工しやすいのでお気に入りのケース。

取り付けるスピーカー出力コネクタは楽器用アンプだとTSフォーンとスピコン端子の2つが主流ですが、今回はしっかりロックできるということでスピコンを採用。XLRコネクタと同じ24mmの丸穴でピッタリ入るので、24mmホールソーで穴あけします。


仮組みした状態。左側がプリアンプ基板だ。



ひとまず仮配線しましたの図。
ケースの大きさがけっこうギリギリなのでACラインがちょっと危ない配線になってますが…。


・完成!

完成図。コンパクトにまとまった。



スピーカーケーブルを繋ぎ、アンプの電源を入れるとLEDが灯った。

アンプのボリュームを少しずつ上げていくと、力強いベースの音がスピーカーから再生された。

今回は無事に一発で成功!

音色も自作プリアンプの出来が良かったのかなかなか太い音色で、かといって安価帯D級製品特有の嘘くささがある訳ではなく、それこそAguilarのD級アンプより更に素直な印象。最高音質とはまではいかないが、試奏やリハーサルで使う分には十分な音質とパワーだと感じました。

制作費用もモジュール、ケース、基板代含めて¥15,000以下と非常に安く済みました。

プリアンプ部分を時前で設計できれば、D級アンプの自作というのはコスパの良いDIYかもしれません。

今後は別のモジュール…Hypex社製のD級モジュールでステレオアンプなども作ってみたいと思案中です。

0 件のコメント:

コメントを投稿