2019年5月18日土曜日

電流帰還DCアンプをつくる 1

柴崎 HAGGYのおいしい醤油背脂ラーメン


欲しいスピーカーがないので、なら作ってみようということになりました。
あらすじ↓

モニタースピーカーを自作への道 1


冷静に考えてみるとスピーカーを作るのはいいとして、問題はスピーカーがパッシブなので別途パワーアンプが必要だ。しかし、ここ数年アクティブ・スピーカーばかり使っていたのでパワーアンプやプリメインアンプは持っていない。以前はクラウンのD-45というプロ用アンプも持っていたけれど、結局出番がなくて売ってしまった。


モノがない以上、買うか不用品を誰かからもらうしかないが、実際に良いグレードのパワーアンプを買うとなると高い。民生用のちょっと古いプリメインアンプを入手するのもアリだが、余分なものが多く付きすぎているし、プロ用(PA用)となるとオーバーパワーな上に静音性に問題がある。とにかくシンプルで音の良いパワーアンプが欲しい。そんな中、スピーカーも作るんだから、アンプもスピーカーに最適なものを自分で作るべきでは…?と思い始めた。

Mark Audioのスピーカーユニットはフルレンジユニットだ。ならば、以前から試してみたかった電流帰還アンプが試せる。せっかくなので今回はモニター用の電流帰還パワーアンプを作ってみることにした。

という訳で、今回はちょっと電気的な話が多いです。





回路図は以下のようにした。


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一番オーソドックスとされる電流帰還アンプの回路図そのまま。
I/V変換段のうしろに色々付いている回路もありますがこれが一番シンプルでしょう。

電流帰還アンプの設計方法や動作のしくみについては、定本  続・トランジスタ回路の設計という本が詳しいので、そちらを読んでもらうか適当にgoogleで検索してみてほしい。参考の回路図はほぼ載っている。

わかりやすく言えば、電流帰還アンプとはフィードバックを戻す部分のインピーダンスが低いアンプだ。 通常、一般的な電圧帰還アンプだとフィードバックをアンプのマイナス入力に戻すが、入力はハイインピーダンスで帰還は電圧モードだ。

電流帰還アンプは入力ではなく、バッファの後へ戻しているのがわかる 。帰還も電圧モードではなく電流モードになっており、そのインピーダンスはバッファの後なので非常に低い。その仕組み自体はダイヤモンド・バッファと通常の電圧増幅アンプを組み合わせたものだが、抵抗を介したI/V変換の動作をうまく利用したものとなっている。 効能としては、高域特性が一般的な電圧帰還アンプと比較して良好とされる。

その一方弱点もあり、容量性負荷に弱い。つまり2wayスピーカーのように負荷にネットワーク(コンデンサ)が入るスピーカーに使おうとすると大抵発振してしまう。直列ネットワークなら問題はないが、原則的にマルチアンプで用いない限りはフルレンジ専用のアンプとなる。フルレンジなら電流帰還アンプが試せる、と冒頭で書いたのはこういった理由からだ。

元々の設計では入力に2.2uFのフィルムコンデンサが付いていたが、せっかく(思いつきとも言う)なのでカップリングコンデンサは廃してDCアンプにした。つまりは今回製作するのは電流帰還DCアンプとなる。(※ダイヤモンドバッファはDCオフセットが出やすいので上下のDCバランスに気を使ってください)



使った半導体について。

バッファの小信号用のトランジスタ(Tr)は工作用に大量に持っている2SC1845/2SA922を採用した。このトランジスタは利得が高く音も良いが、耐圧が120Vと非常に高いので、設計が楽なのと後でアンプの電圧を変更したいときにも耐圧を気にしなくていいので便利だ。

ドライバ段は東芝のTTC004B/TTA004Bだ。これは現行でまだ生産されている比較的新しいドライバー用Trで、コンプリメンタリーも用意されている。昔は長くローコストドライバTrといえば同社の2SC3421だったが、その後継機種とも言える石だ。3421よりも性能が上がっている。音も良い気がする。あとhfeが高い。

出力段は同じく東芝の電力増幅Trである2SC5200/2SA1943のコンプリメンタリー・ペア。本当はメタルキャンTrの雄ことモトローラの2N3055/MJ2955を使いたかったが、今回使ったケースだとTO-3パッケージ側面に取り付けるのが難しかったため、ケースの底面に直付けできるTO-3Pパッケージに白羽の矢が立った。また秋月で1個200円ほどで買えたという経済的な事情で、別に音質的なチョイスではない。しかしこれも良い石である。


ちなみに電源電圧は+-25Vとした。実際は+-30Vくらいまであげようと考えているが、自宅スタジオの環境的に、出力は8Ω/15Wもあれば十分すぎるくらいなので、無理やりに電源電圧を上げる必要性は薄い。意外と知らない人も多いけれど、一般的な能率のSPならば10W級のアンプでも結構な音量出ます。電圧の確保はヘッドルームに余裕を持たすための保険と考えています。一応、現段階の構成でも8Ω/25Wくらいは出る計算だ。


そしてこの回路図を元にフリーの基板CAD、KiCADで基板デザインした。

elecrowにガーバー(加工データ)を送る訳ですが、10*10cm以内に収めると4.9ドルと格安になる。といっても今回は部品点数が少ないので簡単に収まった。入稿を済まし、基板の到着を待つことにした。

しかしこのときはまだ重大なミスをしていることには気づかなかった……。


製作編につづく

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