2020年8月13日木曜日

ギター(ベース)ボディのオールラッカー塗装

今まで作ったストラトプレベのボディ・ネックはすべてニトロセルロース(硝化綿)ラッカー100%で塗装を行いましたが、塗装に関しては塗装工場やギター工房に依頼するのではなくすべて自宅で自分で行いました。そのときの作業工程を簡単にまとめます。

今回はそういったボディーを自力でラッカー塗装をやろうとしている人向けのメモです。

木目が確認できるくらいの薄さを目指す


ちなみにここでいうラッカー塗装は、世間で流通している表層だけラッカーで覆った“なんちゃってラッカーフィニッシュ”ではなく、サンディングシーラーや目止め剤で木の導管を埋めることなく、木の質感が十分に生きる極薄ラッカーの塗装のことです。50年代のFenderより薄い塗装を目指します。



準備するもの


・塗装したいボディ材
・空研ぎペーパー(240〜800番)
・耐水ペーパー(1000〜2000番)
・木材用プライマー
・ラッカー塗料(カラー、クリアーをそれぞれ600mlくらい)
・ボディを吊るす治具(今回はハンガー)


木地調整はランダムサンダーがあると素早く終えることができます。



注意点としては市販のラッカースプレーを使う場合、かならず品名にラッカーと書いてあるものを使うこと。ホームセンターなどで売られている安価帯のラッカースプレーはシリコンなどの合成樹脂が主原料のものが多く、商品名はラッカーと書いてあっても主原料がニトロセルロースではないことがあります。必ず裏面の品名の部分をチェック。(プライマーもね)

市販品だとアサヒペンのアスペンラッカースプレーがオススメです。乾燥が非常に早く、塗膜に強度があるので薄い塗装に向いています。同社の木材用プライマーもニトロセルロース系で同じくオススメ。

ボディの固定方法はネックジョイントの穴を利用して木の持ち手を付ける方法などがありますが、今回は針金ハンガーを分解してフックに改造したものをジョイント穴に通し、吊るしながら塗装しました。

以下作業フロー。






工場から送られてきたNC上がりのアルダーボディ。文字通りCNCで加工された直後のままなのでエッジはカクカク、表面はザラザラしていて何もされていない状態。(コンターが角ばっているのが分かるかと)まずは木地調整していくことになります。





木地調整が終わったボディ。表面とエルボーコンター部分はサンダーを使って丸めます。サイド部分などは空研ぎペーパーを使ってひたすらボディーを整えていきます。ペーパーは240番くらいから初めて600〜800番くらいまででOK。凹凸が大きい部分があると塗料のノリにムラができるのでなるべく丁寧に。





木地調整が終わったボディにプライマーを吹きます。プライマーは塗料が必要以上に染み込まないようにするための下地塗料です。一度に沢山塗らずに2度くらいに分けて満遍なく吹くのがオススメ。乾くと表面がザラっとしてくるのでかるーく800番くらいのペーパーで均してあげると後のラッカーが綺麗に乗る。この処理が終わると少し木地の色が濃くなり、ちょっとツヤが出た状態になると思います。


※以下からは極薄ラッカー塗装にする場合の手順です。ツルツルピカピカの市販品のような仕上がりを求める人はプライマーの後にサンディングシーラーで凹凸を埋めてください。

ネックポケットは塗装が乗らないようにマスキングしておくように。





プライマーが完全に乾いたら、カラーを吹きます。横にジグザグを描きながら少しずつ吹いていきます。コツはボディだけを狙って吹くのではなく、ボディより一回り大きいものをイメージして左右に吹き流すこと。(なので塗料は少し多めに準備すること)表裏がざっくり塗れたらサイド部分も。

一度に欲張るって沢山吹くとムラになりやすいので、全体に色が行き渡ったら30分ほど放置して一旦乾くのを待ち、再度吹くの繰り返し。求める塗装のイメージにもよりますが極薄塗装の場合は4〜5回の重ね塗りで良いと思います。300mlのスプレー缶ならば、丸々2本使うような感じになるかと思います。

カラー層が終わったら、表面に艶出しのクリアーを吹く。これも2〜3回くらい。省略可。




塗装が完全に硬化するまで1日置いてから、ボディ磨き。マットな質感が欲しい人は1500〜2000番の水研ぎで十分。テカりを出したい人は更に番手を上げた水研ぎのあと、コンパウンドで。今回はゆず肌のような少し光沢を抑えた仕上げになっています。

磨いたら完成。ポケットのマスキングテープは丁寧に剥がしましょう。




この手順で仕上がった塗装の塗膜は言うまでもなく非常に薄い。厚みは0.01mmあるかどうかというところだと思う。なので、軽くボディをぶつけただけでも非常に剥げやすい。これをマイナスと捉えるかどうかは人次第だと思いますが、使い込むほどその時間に比例してヴィンテージライクな見た目になっていくは確かだと思います。ポリ塗装や現行品の厚いラッカーだと使いこんでもああいう見た目にはならないので。


今回はホワイト単色塗りつぶしでしたが、例えばメタリックカラーやもう少し彩度が高い色になってくると下地の次にホワイトを一旦吹いてから最終カラーの層を吹く場合が多いです。

また、アルダーではなくアッシュなど木材の木目を活かす場合だと染料で木地着色してから、クリアラッカーを吹くというパターンもあり、最終的な仕上がりによって工程は微妙に違うので、目的に沿った作業工程を選べばそう失敗することはありません。

レッツトライ!!

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