2020年3月14日土曜日

YAMAHA MB-75という楽器


少し前に、YAMAHAのMB-75という楽器をリサイクルショップで格安入手した。





モーションベースという今はなきヤマハのシリーズで、ラインナップのほぼ全てがミディアムスケール(=820mm)という、コンパクトさにフォーカスしたシリーズだ。(一部例外あり。ロングスケールのMotion-LBなど)


手に入れた直後のMB-75


ご覧の通り、バリバリ80〜90年代というルックスである。

820mmスケールなので非常に左手が楽な楽器。Fenderと比べると約5cmほど弦が短くなっている恩恵でローポジションが近く、1〜5F付近も左手のストレッチがきつくないのでスラスラ弾ける。かといってスケールが短いぶん音色に不満が出るということもなく、普通にPJベースの音という感じ。



MB-1 発売当初のカタログ


知らない人のためにモーションベースの歴史に少し触れていく。BBシリーズよりも少し後の1986年に発売されたMB1というモデルが発端だ。コンパクトなボディに24フレットのネック、アクティブサーキット搭載と当時としては最新鋭のモデルだった。当時の定価は約12万円。80年代の貨幣価値を考えると非常に高価なモデルだったというのが分かる。


しかしそういった当初気合の入ったシリーズではあったものの、元々フラッグシップだったBBシリーズ、後続でヤマハの最上位機種となったTRBシリーズと比べると半端なスペックであったMBは販売不振もあり、徐々にコンパクト性を売りにした廉価機種と変遷していく。


1993年のヤマハのカタログ


93年頃のYAMAHAカタログにはこのMB-75の姿も確認できるが、メインはむしろ廉価機種のMB-50、MB-40と定価が5万円ほどのモデルだった。このMB-50と40は当時台湾にあったヤマハ台湾工場製で、コストダウンのためにネックはスカーフジョイント、ボディもラミネイト材となっている。こちらは製造本数も多いので中古市場でもよく見るモデルだ。

MB-75はレギュラーラインナップの中では上位になる日本製モデルで、ボディ材は良質なアルダー2P、アーチドトップ、アルニコVのPJピックアップ、アクティブサーキット搭載というスペック。ネックは下位機種と同じくスカーフジョイントだがGOTOH製のペグがついている。定価¥75,000と考えれば十分に頑張っているスペックだ。

ちなみにミドルクラスのMB-55は日本製だが、バスウッドボディ、パッシブコントロール、ピックアップはセラミック磁石という点でコストダウンが図られている。

MB-75と55は少し特殊でボディシェイプが22F仕様の独自のものとなっている。75に関してはボディトップもアーチドトップになっており、24F仕様のMBやRBXとはフォルムが違う。それ故にボディバランスも他のMBと異なっていて、ホーンが12Fまで伸びているので、立って弾くとFenderに近いバランスだ。これはむしろありがたい。


・ ・ ・ ・ ・


前置きが少し長くなったけれど、自分が入手したMB-75はいわゆるジャンク同等のもので、数千円で投げ売りされているものだった。とにかく汚れがひどかった。

ボディに無数の打痕、塗装割れ、指板汚れにネック裏にキズ多数……という状態だったものの、ネックや電気系は無事であり、反り気味だったネックもトラスロッドを90度ほど回したらほぼ真っ直ぐが出てくれた。

指板・フレットはひどい汚れだったものの、スチールウールとコンパウンドで磨くと十分に綺麗になった。同様に曇っていたペグとブリッジも磨いてやると、当時相応の見た目に戻ってきた。




そのままでも十分使える楽器だったが、更に使いやすくするために何点か改造している。


改造後。トップジャック化している



まず純正のプリアンプを取り外して、パッシブ化した。これは電池の残量に気を使わずに弾きたいので。

そのついでに、コントロールもバランサー、マスターヴォリュームと、トグルスイッチでトーンのon/offという構成に。トーンについては可変でも良かったけれど、思い切ってオンオフのみという仕様にした。コンデンサはwimaの0.022ufが付けてある。

また空いたコントロール穴に出力ジャックを移設し、トップジャックに変更。サイドジャックは接触不良や脚などにぶつかりやすく好みではないことと、普段使うケーブルもL字プラグ(LAVA224)なのでトップのほうが色々と都合が良い。ジャックは4点支持で強固なPure Tone Jackを付けてみた。これ、なかなか良い。



プレイアビリティ面では、どうもこのベース、ブリッジが標準の位置で1弦側にかなり寄っており、ハイポジションでの弦落ちがやや気になっていた。(他のMBで見る限り、この楽器だけがそうという訳でもないようだ)

なのでブリッジをやや後ろにズラしつつ、4弦側にも1.5mmほどブリッジを移動させた。後方にも移動させたのは、ブリッジのサドルの位置に余裕をもたせるためだ。サドルに掛かる弦の角度も緩くなるので、サスティーンも自然になる。


…といった感じに、格安で買った楽器なので何の抵抗もなく改造ができるのも良い点だ。

おかげで弾きやすく、気軽に持ち出せる良いベースが1本手に入った。

重量も約3.2kgと非常に軽く、なおかつギター用のギグバッグに入るのでポータビリティという面でも非常にありがたい。都内で軽くセッションなどに繰り出すときには最適なベースとなりそうだ。


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