2022年6月11日土曜日

羨望のU47 検討編



Neumannのヴィンテージマイクといったらその筆頭はU47だと思う。

近年は中古市場にさえ一切出てこなくなってしまったので、老舗スタジオ以外では見かけることはほぼなくなった。数年前までは100万円台だった相場も今は20,000ドル以上になり、円換算だと300万近い価格が付くこともある。

U47のスムースな高域(Silky Top)と深いボトムエンドは誰にとっても魅力的なサウンドのひとつされ、真空管マイクのリファレンスになっています。高域が綺羅びやかに聴こえるようにデザインされたU67や87の時代と違って非常にナチュラルかつ色気のある音。真っ直ぐという表現が一番しっくりくるマイク。

去年Manleyの真空管マイクを手放してしまってから、オールドのFETマイクを使うことが多くなっていたので、最近また妙に真空管の音が恋しくなってきている。(GTのmodel1Bは持ってますが)

今日はそんなこんなでU47の欲しいけど、オリジナルはまず買えない。さあどうする?という話。



U47は終戦直後の1947年に販売が開始された真空管マイクで、1965年頃まで生産されました。後にFET素子を使ったFETバージョンも販売されます。このFETバージョン(U47-FET)はNeumannから最近リイシューされましたが、真空管を搭載したオリジナルのU47のtubeモデルはいまだにリイシューされていません。というか、現実的に作りたくてもできない理由があるんです。

その大きな理由が心臓部であるメタル五極管、VF14が超希少品であるためです。


Telefunken VF14

Telefunken製のVF14は非常に古い真空管であり、そもそも半世紀以上前にNeumannが確保できなくなったことが原因でU47の製造は終了しました。現在はデッドストックどころか中古品でさえ市場にほぼ出なくなっています。出たとしても一本が2000ドル以上に高騰しており、動作不明のジャンクや偽の刻印がされた模造品も大量に紛れ込んでおり、性能の保証されたNOS品を手に入れるのは不可能に近いのが現状。

厄介なのがU47自体が設計もVF14の特性に合わせているために、元の設計のまま別の球に置き換えることは基本的にはできません。ほかの真空管に置き換えるにはプレートバイアスとヒーターの電圧を変えて再設計する必要があります。

ちなみにヴィンテージU47を使い続けるうえでも保守用のVF14が入手困難になったため、代替の小型真空管(RCA Nuvistor)をセットできるように改造するキットも過去に流通していました。

この辺は界隈では割と一般情報なのでサンレコのムック本なんかにも書かれてますのでそのへんで読むといいと思います。(海外サイトだともっと詳しい解説がある)

ヴィンテージNeumannでマイクの銘機というと、M49やU67などの真空管マイクもたびたび話題になるけれど、M49もU67もオリジナルのチューブ(AC701K、EF806S)やクローンのカプセルはまだ入手できるので作ろうと思えば、その音を限りなく再現できるとは思います。U67に関してはつい2年ほど前にNeumannからオフィシャルのリイシューモデルが再販されたくらいです。


市販のU47クローン

一応Neumannではないメーカーが作っている現行のU47クローンがいくつかあります。

まずTelefunken USAから出ているある種こちらもオフィシャルの復刻U47。(U47はTelefunkenのバッジが付いて売られていた時期がある)オリジナルのU47を模したと思われる筺体デザインで、カプセルはM7カプセルが採用されています。そして真空管は一見VF14のようなメタル筐体の真空管(VF14K)がマウントされていますが、中身は既存のガラス五極管をリパッケージしたものでまったくの別物みたいです。値段も値段ですが音質的な期待はできなさそう。

アフォーダブルな価格が魅力のクローン機材を多くリリースしているWarm AudioではWA47というU47クローンを謳っているマイクがあります。こちらはカプセルはおそらく中国製の量産品で、真空管も五極管ではなくJJ Electronicsの5751という12AT7に近い双三極管が採用されています。真空管やサーキットも異なりますし47とは別物のコスパ重視の真空管マイクといってもいいと思います。

ヴィンテージNeumann系のマイクリイシューで有名なPelusoではU47タイプの真空管マイク2247が3種類、グレード違いでラインナップされています。まずノーマルの2247ですがこれは6072A(12AY7)という三極管が採用されており、回路構成は不明ですが恐らくWA47に近いシンプルな現代の真空管マイクです。音が近くなる要素はほぼありません。

つづいてミドルレンジの2247SEですが、これはTelefunkenではなくRCAのヴィンテージメタル管6SJ7(5693)が搭載されています。どちらかというと楽器用アンプの増幅段に使われるような球で、これも形状は全く違いますがPelusoによると音響特性がVF14と似ていると主張しているようです。

一番値段の高いリミテッドモデルの2247LEはVF14に特性が近いNOS品のTelefunken EF12もしくはEF13を選別して搭載した近いマイクです。カプセルとトランスは製造元が不明のPelusoオリジナル品を採用しているものの、その構成自体はオリジナルU47を強く意識したものになっています。

……といった感じで、既製品のU47クローンはPelusoの2247LEを除くと、飽くまでもそれっぽい真空管マイクという立ち位置かなと思います。ただ2247LEは内容を加味しても価格が高すぎる感じはしますね。(真空管以外の部分…筐体や電源はほぼ同じ。電源は既製品ユニットのようにみえる)



U47は自作可能か?

U47回路図

心臓部のVF14を除けば現在でもカプセルはK47とM7のオリジナルに近いリイシューが手に入りますし、トランスも精度の高いAMIのBV8クローンが入手可能です。

回路図を見ると分かる通り、U47は非常にシンプルな構成のマイクです。三極管接続したVF14のカソード接地をそのままカプセルと出力トランスに繋いだだけのもの。素子の数はカプセルとトランスを除くとたったの11個。回路としては難しい部分はありませんが、そのシンプルさ故に各コンポーネントの特性がそのまま音に出るとも解釈できます。

となるとやはり心臓部の真空管を何にするかということが課題です。

いずれにしろVF14が入手不可にほぼ近いということで、オリジナルU47の音質を手に入れるというのは現実問題難しいですが、それでも何とかしてU47の音を得ようとマイク自作する人も世界中に沢山います。


Wagnar Remake U47

これはNOS部品などを使って外観含めて限りなくオリジナルに近いU47を製作している所。球はNOSのオリジナルVF14を使用。


MOXTONE LAB.

VF14の代わりに特性の近いNOSのTelefunkenEF13で代替してU47を再現。カプセルやトランスは毛色の違うものを使っていますが、パワーサプライもレギュレータを使って安定化電源で自作しているのが特徴です。(ページの解説はボスニア語??)


AMI Transformer U47 kit

ヴィンテージマイクの解析からオリジナルマイクトランスの再生産、OEMを手掛けるメーカー。ヴィンテージメタル管が搭載できるU47ロングボディのキットあり。後述のD-EF47 U47クローンはここのトランス(BV8R)を使っている。


Neumann tube u47 diy

日本人でも解説している人がいます。(自作の真空管機材をよく出品している人)ここでも球の代替候補としてEF13が挙がっています。


D-EF47 (Vintage Microphone Kit)

AMIのOliver Archutが再設計したU47の回路を元にキット化されているDIY向けのPCBキット。パワーサプライ基板もセットで、パーツも現行の指定品を使うことで再現性の高い性能が出るようになっています。真空管はガラス五極管のEF80もしくはEF800が標準での指定品。D7というM7のクローンカプセルが用意されています。


とまあこんな感じで、U47はシンプルなマイクがゆえに海外では活発にDIYされているマイクのひとつでもあるんですね。

ほかの海外DIYキットだと、Mic and modのU47キットは真空管をU67にも使われたEF806sで代用しているみたいです。低電圧で使うと特性的には結構VF14とは違うのでU47かと言われると微妙なところですが、現行で手に入る五極管としては悪くないとは思います。海外のレビューも見る限り、音の評判はそこそこ良いみたいです。

キットの価格は799ユーロと、フルキットですが現在の為替レートを配慮しなくてもややお高めの設定。金額は割高な気がしますが、パワーサプライやケーブルを自作する手間を考えるとMaMのキットも悪くない気がします。(MaMのキットはパワーサプライだけは完成品で付いてくるので)

ほかの選択肢としてはヴィンテージEF管のEF13かEF12あたりを海外から入手して、別途AMIでトランスとカプセル、ボディを買って組み込む…などもあると思います。キットでないと大変な部分はありますがコストは最小限で済みます。あと素子の選択肢は広い。


実装部品はなんとかなるとして、まずはメインで使う真空管を選定しつつボディやカプセルの入手からなんとかしようと思います。(もう半分作る気でいる)

この先はどうなる!? 

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