2022年4月4日月曜日

伏兵Sound Warrior SW-HP20-Bを買う

少し前の話。

イヤーパッドを分解したら謎の石が出てきたモニターヘッドフォン、PhononのSMB-02ですが結局その後またドライバのビリつきが再発生して、流石に寿命だと感じて買い換える必要が出てきました。



買い換えるといっても、個人的にはこれがもうリファレンスになっているのでむやみに他のヘッドフォンに変えたくはない。なのでまたSMB-02を再購入…になる筈が、いざ買い直そうとネットで検索してみたところこのSMB-02、尋常じゃないくらい値段が上がっていた。


数年前に購入したときの明細


数年前にロッ○オンで買ったときのセール価格 ¥15,800

2022年現在の新品価格 ¥35,000


あまりの価格差にかるく立ち眩みしました。


たしかに自分が買ったときは箱汚れ品で新品とはいえセール価格でしたけど、それでも定価が2万円ちょっとだったはず。それがいまは¥35,000! 2倍以上の値段になっています。

Phonon製品はよく出来ているし、ミュージシャンやエンジニアの評判は良い。かつてモニター契約していた知り合いも居る。だけどやっぱり3万、4万と出す値段の製品ではないと思う。筐体はプラスチック感かなりチャチだし、どちらかというと余分なものを削ぎ落として音質を優先したCP重視の製品だから使っていた訳であって…。同じ金額を払うなら、他社製でもっとグレードの高い製品を探したい。

ともかく、Phonon以外で新しいヘッドフォンを探さないといけません。


※このエントリを投下した直後に新モデルのSMB-02Gが出ましたが値段も更に上がっていたので完全候補外になりました


探しているヘッドフォンの条件としては、

・基本的にミックスでは使わないのでRec中のモニターとして使うのがメイン

・なので、できれば密閉型

・高域がナチュラルで突き刺さるような帯域がないこと

・サブベース的な最低域がしっかり聴き取れること

・消耗品なので予算は3万円台まで

…といった感じになる。


ちなみに以前から気になっていたヘッドフォンとして地元高崎のレコーディングスタジオ、TAGO STUDIOがプロデュースしているヘッドフォンT3-01があり、これも候補のひとつでした。

T3-01は発売されたばかりの頃に一回だけ試したことがあり、密閉型特有の癖がなく、レンジも広く表現も繊細で、音の良さは認知していました。ハウジングが木製で高級感もあり、ギアとしては非常に魅力的だったものの、定価が約6万円と予算が大幅にオーバーしていることにより泣く泣く断念した。まあ出せない額ではないけれど、いずれは壊れる消耗品と考えるとなかなか手が出しづらい。(投資で大当たりでもしたら買う夢にしておこうと思う)

また買い替え候補を探している最中に知り合いからFocalのListen Proffesionalの未使用品を格安で譲ってもらい、ちょっとだけ使っていたこともありますが、こちらは音以外の問題がありました。音質的には悪くないヘッドフォンだったのですが、イヤーパッドの側圧が強すぎて頭が痛くなるという問題が発生。2,3回だけ使って、使い続けるのを断念しました。


とまあ、紆余曲折しながら結局は「現物見てみないと分からないことが多いし、店で片っ端から試聴していくしかなくね?」という感じになったのですが、今はコロナ禍。しかも都内でオミクロン株大流行中という状況下で身体に装着するデバイスを試しに行くというのはなかなかリスキーでした。タイミングが悪い。


・ ・ ・ ・ ・


なかなか良いものないな〜やっぱり出費覚悟でTAGOかな…など色々考えていた頃、知り合いのミュージシャンとの会話の中で「エンジニアの人がSoundWarriorが良いと言っていたよ」という情報をキャッチ。

Sound Warriorなんて聞いたことないブランド。さっそくネットをサーフィン(死語)してみると、長野にある城下工業という会社が製造している音響ブランドで、製品も全部国内で作っているらしい。そして幾つかのレビューを覗いてみるとヘッドフォンについては概ね以下のような評判でした。


・見た目は非常にチープで、高級感はないが軽い

・サウンドは制作用モニターからリスニング、マスタリングに使えるクオリティーであり、全帯域においてバランスも良く、突出したピークもなく非常に優れている。

・国産ながらコストパフォーマンスは抜群(一番高いモデルでも2万円台前半)


しかも密閉型と開放型どちらも同じクオリティーとしてラインナップされており、優劣がついているような印象もなく、どちらも評判を見る限りすこぶる良いのです。

全然知らないブランドだし、ここまで評判が良いと気になるどころか怪しいものですが。でも2万円くらいなら失敗しても痛くはない金額なので、ものは試しと試聴せずにいきなり購入することにしました。


SW-HP20-B


購入したのはSW-HP20-Bという密閉型のモデルですね。

密閉型ではHP10sの上位モデルですがそれでも実売価格は2万円切ってます。安い。


さっそく注文した翌日に届いたので開封。箱も非常に素朴なものでした。

とりあえず全くエージングしないで早速リファレンスにしている数曲を流してみる。

ヘッドフォンアンプ等は特に使わずに、FireFace UCX-IIのHPアウトで直接ドライブ。


……!

なんだこれは…

滅茶苦茶良いじゃないか!


ファーストインプレッションでは少し低音が強調されるかなという印象はあったけれど、ボヤっとした音像ではなくベースやキックの余韻がしっかりと聴こえるし、低いレンジの解像度が高いです。サブベース的な40Hz以下の帯域も十分聴き取ることができる。

高域は相対的にソフトで優しい音だけれど、籠もっている訳ではなくスーッと伸びる高域でナチュラル、こちらもやはり解像度は高い。音楽ソースによっては、アコースティック楽器収録時のフロアノイズや他の音でマスクされがちな微細な音がよく聴き取れる。

この時点でもうSMB-02の性能を軽く超えていることは確信しました。

SMB-02は他の密閉型ヘッドフォンと比べても定位がやや狭まるのが難点だったんですが、SW-HP20-Bではそういうこともなく定位が広く聴こえます。左右の分離感も十分。あとSMB-02では中高域に耳障りなピークがあり、そこを逆算してヒアリング・チェックしなくてはいけなかったんですがSW-HP20-Bは突出したピークがなくフラットでバランスも良い。

音質的には、ほぼ巷のレビュー通りの性能です。素晴らしい。


ちなみに礼賛しまくっているとアレなので敢えてマイナス部分というか、賛否のある部分を挙げるとすれば音質ではなく装着感や取り回しの部分ではないかと思います。

・イヤーパッドがやや特殊な形状。耳の形が合わない人は密閉型ですがフィット感や音漏れの問題がありそうです。(自分の場合は特に問題なし)

・標準で付いているケーブルが脱着可能とはいえ1.2mしかなくやや短い。延長ケーブルがついてますがこれは継ぎ足す方式で音質的にも良くないし、延長すると3mくらいになってしまいこれはこれで長すぎてしまう。

密閉型にしては音漏れが大きい。ハウジングとイヤーパッドの構造の問題か。


入力端子は3.5mmミニフォーンだ



ちなみにヘッドフォンの入力は左右のイヤーパッドで独立していて、そこに3.5mmミニプラグのケーブルを接続する方式。これはヘッドバンドの中をケーブルが通る構造だと耐久力が難があるのでそれを回避する意図があるみたいです。メリットとしては左右のGNDが独立しているのでバランス駆動が可能なこと。デメリットとしてはケーブルが頭からY字に垂れるのでケーブルと身体の位置によっては邪魔になることがあるかもしれない。


トータルで見ればかつてのPhononのように名より実を取る優れたプロダクトでした。音質面ではまったく不満はないです。3万円台までの製品では音質・解像度では抜きん出ているのではとも思います。いずれは開放型のフラッグシップモデルSW-HP300も試してみたい。


ちなみに最低域の伸び・反応の良さはいままで試してきたヘッドフォンのなかでもピカイチなのでベースのライン録り時のモニター用としてはSW-HP20-Bが本当におすすめです。SMB-02もよくベース向けと言われていましたが、自分はSW-HP20-B買った翌日に捨てました。

おしまい。

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