2022年3月28日月曜日

Austrian Audio OC18についての所感



以前から気になっていたAustrian Audioのコンデンサーマイク、OC18をレンタルすることができたので使用感や音とかのレポートを。



Austrian Audioは数年前にかのAKGが韓国SAMSUNGに買収された後、オーストリアに残ったスタッフ達がその受け皿として立ち上げたマイクロフォン/音響機器メーカーです。詳細は本家HPに書かれているので割愛します。

AKG製品については、自分も2010年頃までは愛用していましたが、ヘッドフォンやコンシューマー/プロ製品の多くが中国製となり近年はクオリティーの低下から使う機会がほぼなくなっていました。そういった直近でAKGの悪いイメージが続くなか「音楽の国オーストリアで最高の製品を作る」という初志を掲げたAustrian Audioは発表当時から気になっていたんです。

フラッグシップモデルのマイクはOC818というマルチパターンのコンデンサーマイクで、PCのエディタで録音後から指向性が変更できるというぶっ飛んだ機能も内蔵されています。OC18はカプセルや増幅回路はOC818と同等品であるもののパターンを単一指向性に絞ったモデルです。オーディオテクニカでいうところのAT4050と4040の関係が近いと思います。

うちのスタジオの環境だと無指向性や双指向性での録音がないので、今回はひとまずOC18だけ借りました。


実際に使ってみて感じた音質等について

音色は癖が非常に少なくナチュラルです。開発の経緯からAKGのC414系が比較に挙げられますが、C414とはまったく素性や特性の異なるマイクです。

OC18は入力の大きさに対して音色が大きく変化するようなこともなく、例えばヴォーカル録りでオン気味のセッティングでも低域が膨らみすぎることもなく、レベルが入ったときに強いピークが発生することもなく…広いダイナミックレンジを持っていることがわかります。これは録音後の音抜けを考慮して高域に強いピークを持つC414XLIIなど真逆の設計だと思います。

周波数特性グラフを見ると5kHz付近が持ち上がり、その少し上の帯域が凹み、更にその上の10kHz以上はブーストされた特性になっています。この高域のスクープしたカーブが『痛くないけど明瞭で自然な音』のキャラクター付けになっているのではないかと思います。(8kHz付近はアタック成分の倍音などが集まりやすく耳に痛い帯域)


アコースティックギターの収録にも使ってみます。マイクはサウンドホールからややオフめのセッティングでしたが、音像がボケることなく明瞭ながら、かつ線が細くなることもなくナチュラルな音で録音できました。

アコースティック楽器だとボディの生鳴り感…この場合だと楽器から直接発せられる低音要素ですが、それもしっかりとキャプチャーできています。高域の倍音成分も十分に足りているので、後で大幅なイコライジングしなくてもいいという想定で録音が進められるのが好印象です。逆にもう少し強調したい帯域があればミックスでEQすることで自然に仕上がります。


また特に印象的だったのがセルフノイズが非常に少ないこと。プリアンプのゲインを通常通りのセッティングでマイクを録音チャンネルに立ち上げたところ、ほぼノイズがなく驚きました。「プリアンプのゲイン上げたよな…?」と確認してしまったくらいです。OC18は単一指向性なのでよりその傾向は強く、カプセルの真正面以外…例えば背面方向の音は殆ど拾いません。なのでナレーションや静音性が求められるシチュエーションでは特に力を発揮しそうです。


マイナス点があるとすれば、マイクの形状が楕円筒型なのでRycoteのような汎用ショックマウントは形状的に使うことができないこと。原則として付属の純正ショックマウントを使うことになります。純正のショックマウント自体はよく出来ていて、オーテクのようなヤワな構造ではありません。メインで使うマイクスタンドを複数台用意できればこの点についてはたぶん問題ないでしょう。(ちなみにC414のショックマウントは流用できるらしい)


総じて、OC18はヴォーカル録音から楽器収録まで使える、高性能なマイクだといえます。サウンドキャラクターはNeumannのように特徴的なものではないものの癖も少なく、あらゆるシチュエーションを想定して使える懐の広さをもっています。価格もオーストリア製でありながら10万円を切っていることからCP的にも宅録ミュージシャンのメインマイク候補になると思います。まさに日陰の君です。

遠くないうちに今回試せなかったフラッグシップモデルのOC818も是非試して、キャラクターの違いなどがあるか吟味してみたいと思います。

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