2026年2月11日水曜日

チェロの4度調弦について(ベーシスト、チェロを弾く)

ベースと比べるとだいぶ小さい

去年、前から弾きたいと思っていたチェロを手に入れました。

古いドイツ製でベネディクト・ラング(Benedikt Lang)という工房のもの。

大昔Juzekを作っていたメーカーのひとつで、今はなき良き時代のドイツ量産品です。



入手当初はネックが外れていて、魂柱も倒れている、というジャンク状態。ということでほぼ貰ったようなチェロです。真っ当な状態ならそれなりの値段になっていると思いますが、いつも通りジャンクで入手しました。私のことはゴミパンダと呼んでください。

もちろん譲ってもらったのは修理できる算段があったからで、表板や裏板に壊滅的な割れがなかったからですね。パッチや接着で直らないレベルの割れがあると表板を一度外す“解体”が必須になり、修理費用が一気に上がる。

普段ベースを修理・調整してもらっているアトリエハシモトさんで直してもらいました。

戻ってきたチェロはあたかも最初からそうであったかのようにネックがくっついていて、塗装も違和感なく完全に直っていました。素晴らしい技術ですね。


4度で弾く

とりあえずリペアしてもらって弾けるような状態にはなったのですが、問題はチューニング。

伝統的なチェロのチューニングは低いほうからCGDA、つまり他のヴァイオリン属と同じ5度チューニングです。

しかし自分が普段弾いているベース(コントラバス)やギターは基本的に4度チューニングです。

もうベースやギターを弾き始めて20年くらい経っていて、普段弾きの楽器と音程の間隔が違う弦楽器を新たに習得するというのは、フィジカル以上に頭脳が混乱します。

チェロのスケールはギターに近いものなので左手のフィンガリングはそこまで違和感ないですが、弦移動をしたときの音程が普段弾いている楽器と全く異なるので、チェロを弾く時だけ頭を切り替える、ということがなかなか難しい。

なので思い切ってベースの1オクターブ上、もしくはギターの6-3弦と同じEADGのチューニングでチェロが演奏できないか、と真剣に考えてみました。本気と書いてマジです。


まず前提条件としてチェロをチェリストとして真剣に修めたいのであれば4度チューニングとかやっている場合ではありません。伝統的なチェロ曲で困難な部分が出てくるのは明白で、オーケストラなどの合奏では動きが周りの人と合いません。何よりまず先生が居ないでしょう。

今回は飽くまでもベーシストがベースの合間にチェロを弾きたい、ということに対してどう合理化していくかというテーマです。


弦とセッティングについて

まず4度チューニング自体が実現可能か、という問題に関しては普通に可能です。探すと何人か実際に演奏している人を見かけますし、普通にダダリオから4度チューニング用の弦も売っています。これを張ればすぐに4度へのコンバージョンは可能ということですね。

演奏上の課題としては、EADGのチューニングにすると最低音がE2となり、チェロのレギュラーチューニングよりも最低音が高く(音域が狭く)なってしまうことでしょう。

CからEに上がることで音が明瞭になるというメリットもありそうですが、独奏の音域が狭まるということと、ベースパートを担当する曲ではオリジナルの演奏が不可能の場合があります。

まあこのへんは妥協するしかないと思います。CADG(4度調弦+ドロップC)っていう変則的なチューニングでもナシではないですが、余計に頭が混乱しそうです。

で、一般的なチェロのEADGへのチューニング変更ですが、楽器はそのままで、かつ専用弦でなくとも、チューニングの変更自体はそこまで難しくないと考えました。

1弦をAからGにするには全音下げなので、通常のA線用の弦で特に問題ないでしょう。A線は元々テンションがきついので、それを和らげるメリットもあります。

2弦は4度チューニングでもDのままなので、何も変更しなくてOK。

3弦はGからAに全音上げる必要があります。テンションはきつくなりますが、通常の弦で問題ない範囲の調弦です。念の為、柔らかい弦(ソフト、ドルチェ、バイヒ等の表記)を使えばより違和感はないでしょう。

問題は4弦で、CからEまで音程を上げる必要があります。長3度、つまり2音上げるとなると元々太いC線はテンションがきつくなり、ネックの負荷や楽器のバランスが崩れる可能性があります。逆にG線用として売られている弦を1音半下げる、というほうが現実的でしょう。

EADGチューニングを行うには、専用弦でなくとも4弦だけは買い直す必要がありそうです。


実際に4度チューニングする

実際にこの方法でチューニングを試みたところ、うまくいきました。

気になる4弦をEにチューニングですが、弦はラーセン社のG線で、太いゲージが中古で安く手に入ったので試しに張ってみたら問題ありませんでした。弦が細くなるぶんテンションが多少ゆるいのは気になりますが、弓をフォルテしても音量や弦の振幅はちょうどいい感じで質量不足は感じません。

ただ思ったよりも弦の張力自体は余裕がありそうなので、細いC線をアップチューニングでもいける可能性はあります。張力は弦のブランドやモデルに依存する側面が強いので、最適な種類は今後色々試してみるつもりです。最初からダダリオの専用弦を買うほうが安上がりになりそうですが……。


4度チューニングされたチェロはベースに親しんだ自分にとっては非常に弾きやすく、サウンドや弾き心地も違和感なく普通に演奏できています。

音色は少し柔らかくなるというか、倍音が減ってまとまり感のあるサウンドです。

このあたりは第一弦であるA線がGまで音程が下がっている影響が大きいと思います。

現代のモダン・チェロでは弦が金属弦になったうえで、ヴァイオリンに負けないくらい綺羅びやかな倍音が出るようなセッティングになっていることが多いです。そのため、市販の弦も第1弦であるA線の張力がどうしても高くなりがちな仕様です。

1弦をドロップするので張力と共に倍音感が下がって金属的な響きも同時少なくなり、2弦との違和感が少なくなっているように自分は感じます。普段クラシックやチェロのソロ演奏を聴きまくっている人なら『丸すぎる音』かもしれませんが、自分にとっては丁度良く聴こえます。


弓とか他の道具とか

弓はチェロ用の廉価弓を使っています。

チェロ弓をベースのジャーマン・スタイルのように下から持って、ヴィオールのように演奏しています。正しくは上から持つべきですが、ベース弾きの自分では下から持つのがしっくりきています。

ちなみにベースの弓も使えなくはないですが、弦が細いため重量過多な感覚でやや弾きにくく感じました。

松脂は普段ベースで使っているものと同じもの(カールソン)を使っています。


とりあえず“ベーシストが弾くチェロ”にはなったので、息抜きにぼちぼち弾いていく予定です。上手くなったらライブでも使うかもしれません。



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