2022年製。
2019年にプレシジョン型のベースを作ってもらってから、ハナムラ楽器の常連となりつつあった自分は、店を訪れるたびに「次はギターを作ってもらいたい」ということを花村さんに話していた。
しかし花村さんの楽器は安くはない、ある程度まとまった予算が必要だ。
そしてようやく2022年の秋頃、とある大きな仕事でそれなりの額のギャラを受け取った自分は札束の入った封筒を持って明大前のハナムラ楽器に向かい「最高のクラシックギターを作ってほしい」と花村さんに依頼した。
それで2ヶ月後くらいに出来上がったのがこれ。
スペックは以下の通り。
指板:チーク
ボディトップ・サイド:スプルース
ボディバック:シダー
塗装:オール硝化綿ラッカー
自分は手が小さいので一般的なクラシックギターよりもスケールはやや短く、ネックの幅も抑えめにしてもらった、花村さんはオーソドックスなスペックで作りたいと言っていたが(まあ面倒なのだろうと思う)、結局熱意ゴリ押しで1からオリジナルの特注品の仕様になった。
「最高のエボニー(黒檀)とホンジュラス・マホガニーで特注ネックを作ったら100万くらいになる」と説明を受け、予算上限がやや怪しくなる中「ほかに銘木というと、チークがあるよ。これはすごく指板に良いし安い」と代案を考えてもらった。
チークはギター用材としてはかなりマイナーであるものの、歴史的に見ると銘木扱いで三大銘木に数えられるときもある。油分を多く含み、硬く、狂いが少ない。東南アジアでは船の材料として重宝されてきた木だ。なので耐久性という意味では確かに良さそう、と思い指板はチークに決定した。
ネック材はおまかせしたが、結果的にアッシュになった。ベースのブティック・メーカーがアッシュネックを作ることは稀にあるけれど、クラシックギターでは世界で初めてなんじゃないかな。結果的に材も全体的にユニークなギターに仕上がった。
ちなみに花村さんは2025年に89歳で引退したから、これはもう最晩年の作品になる。
楽器の仕上がり精度は正直良くはない。見た目の不細工だ。が、音は本当に素晴らしい。
優しく深い音色で、かつそこまでボディは大きくないものの音量がしっかり出る。新作のクラシック・ギターでは高級品でも出ない音が簡単に出てくる。(いつかナイロン弦ではなく本物のガット弦を張りたいと思っている)
見た目はひどいギターだが『花村節』が全開のギターだ。最高のクラシックギターには間違いないと思う。
知り合いの“たりきこうぼう”でフレットとナットのすり合わせ&再接着だけしてもらって、それ以外はオリジナルのままだ。以後演奏面もこれといって問題ない。ピッチも合う。
入手以来色々なシチュエーションで使っていて、最近だと『Melancholy Irises』のレコーディングで使った。ライブで直接自分が弾くことは少ないけれど、友達に貸すことも多い。
言うまでもなく一生物の楽器だ。
自分が死ぬ頃には誰かに託したいと思います。


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