2025年7月4日金曜日

Neve3415/Aのサミングミキサー化

はじめに

所有しているヴィンテージ機材のひとつにNeve3415/Aがある。


Neve3415/Aは70年代、イギリスの放送局BBCに納品されたコンソールのライン・モジュールで、中には入出力トランス(マリンエア製)とプリアンプが2基搭載されている。Neve1272に近いと言われるが、時代的には少し後のモジュールで、アンプモジュールはAB級プッシュプルとなり、出力トランスもPCBマウントのやや小型のものが使われている。フルディスクリートで構成されヴィンテージNeveのなかでは後期の製品にあたる。

これを現在は1Uケースに2chラッキングし、2chマイクプリアンプとして運用している。

が、稼働率があまり高いとはいえない状態。うちのスタジオでレコーディングをするとなると、ほぼヴォーカルなどがメインの録音なので、ダイナミックレンジの広いマイクプリアンプをファースト・チョイスにすることが多い。Neveはその特性上ヘッドルームは狭いので、最近は音色にキャラクターを付与する機材、というポジションに収まっている。

現状はイギリス狂いの友達に貸しっぱなしという状態。もうちょっと活用方法はないか、と思い始めた。


そこでふと思い立ったのが、元がコンソールのラインモジュールなので、マイクプリではなくラインレベルで信号を通す専用のサミングミキサーとして運用するのはどうか、というアイデア。これならばマイク録音だけにかぎらず『音色にキャラクターを付ける』という役割に特化して使いやすくなる。

しかし、完全にサミングミキサー化してまうとマイクレベルで信号を受ける時に不便が生じるし、ゲインが不足する可能性もある。

今まで通りマイクプリとして運用しつつ、同時にラインレベル用のサミングミキサーとしても活用できるモデファイを考えてみることにした。



構想

まずNeve3415の回路構成をあらためて分析する。

信号のフローは入力トランス>アンプ初段>フェーダー>アンプ後段>出力トランスである。

Neve3415回路図

回路図は既に出回っているのでそちらを参照してもらいたい。自分の所有する3415は3415/Aであるけれど、基本的にノーマル3415と回路上の差異はほぼない。(/Aのように後ろにアルファベットが付くモデルは、BBCが特注した印だ)

回路の構成はいわゆるトランスと2段増幅アンプを組み合わせた典型的な70年代の機材でこれといって特別な要素はないが、心臓部がオペアンプで構成されるAPIと違って電源は+24V単電源だ。アンプも完全なオペアンプではなく、シングル増幅アンプにアレンジを加えたものであり、動作点の問題もあってヘッドルームは広くはない。ゆえにダイナミック・レンジが広すぎるソースには向かない。

で、現在の状況としては入力トランスの巻線比をいじって、入力インピーダンスは300Ωで受けるような仕様に改造している。これはヴィンテージ・マイクなどいにしえのトランス出力機材にベストマッチするためのモデファイだ。

問題は300Ωだとトランス出力ではない電子バランス機器の出力受けるにはインピーダンスが低すぎることだ。巻線比を戻して1.2kΩに戻すことはできるが、それでも出力側のインピーダンスが十分に低くないと周波数特性に問題が出る可能性があるとは思う。

結論からいうと、元々の入力トランスとは別途ライン入力トランスを用意し、入口を2つにすることにした。マイク入力とライン入力は独立した構成にし、何らかの方法で2系統の入力を切り替え、出力アンプに接続するというフローだ。


そこでよく考えなくてはいけないのは、どこで信号を切替えるか?ということ。3415は単独でケーシングされたモジュールなのでケース内の基板上から信号を引っ張ってスイッチやリレーを追加するのはほぼ不可能。モジュールは背面の凸ピンにエルコ製のコネクターを接続してそこから配線する仕様なので、その外側の部分でしか信号の切り替えを操作はできない。

回路図上を観察すると、コンソール・フェーダー(ボリューム)部分で一旦モジュールから信号が出てくるので、そこでマイク/ラインを切り替えることにした。つまり、ライン入力時は初段のアンプはバイパスされる。それでいいのか?と思う人もいるかも知れないが、音の肝は後段アンプと出力トランスなので特に問題はないは思っている。

マイク/ライン切り替えは2回路リレーで行い、配線をなるべく引っ張り回さないように工夫する予定だ。


あとはこれらの改造アイデアとモジュールをどのような筐体(ケース)に収めるか、というのも考えないといけない。

現在使っている筐体は1U。新しいコントロールの類をこのサイズのまま追加する余裕はほぼない。なので、ケースはより大きなサイズで新しく作り直すことになると思う。となると、パネルがより大きな2Uサイズ(高さ88mm)での製作が現実味をおびてくる。

ケースが変わると電源やモジュールの固定方法なども一度考え直さないといけないので、製図などをしながら新しい筐体を設計していきたい。

少し長いプロジェクトになりそうだ。

(しばらくしたらつづく)

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