2016年3月3日木曜日

楽器紹介 1966年製フェンダー・ジャズベース

いわゆるパドル・ペグとドット・バインディングの66年


付き合いが長い人には意外だと思われそうだけど、ずーっと前から一生もののジャズベースが欲しかったし、探していた。

それこそ10代の頃から探していたけれど、多弦ベースがメインだったから優先順位もあってなかなかちゃんとしたFenderの楽器を手にすることって全然なかったんですね。ましてやオールドなんか…。

僕のメイン楽器である66年製フェンダー・ジャズベースについて紹介します。



手に入れたのは音楽活動が色々うまくいってなくて、むしゃくしゃしていた頃。
ウェブで「お前の好きそうなやつが出てるよ!」って教えてもらって。まず見た目がホワイトのマッチングヘッドっていうのがドンピシャだった。ジャズベをせっかく買うならレアカラー系のマッチングヘッドが良いとずっと思っていたから。(サンバーストは似合わない)でも、レアカラーって昔から凄く高くて、今でなくともオリジナルのレアカラーだと普通のサンバーストの倍くらい価格が付いても不思議じゃなかった。

購入当時の66年のジャズベースの相場は、サンバーストでもそこそこ高いお値段。塗装がヘタってたり、オリジナル部分に手が加えられたものは比較的安くなることもあったが、それでもミュージシャンとして独立したての自分には到底買えるような代物ではなかった。

でもこいつはホワイトなのに値段がだいぶ安かった。(後述)
平均的なサンバーストの66年のジャズベと同じかそれよりちょっと安いくらい。といってもそれでも高くて、すぐに決断できるものではなかったけれど…。逆にちょっと安すぎたので何か機能的な面で問題を抱えてるのではと疑っちゃった記憶がある。まあひとまず楽器としてどうなのか知りたくて、試奏するだけならタダと思い、電車で1時間ちょっとの遠い楽器屋まで足を運んだ。

実際楽器屋で対面してみたら、ウェブに載っていた画像よりずっと年季が入っているという印象だった。年季が入ったオリンピック・ホワイトで、適度に日焼けのムラはあるけど塗装自体は剥がれがすくなくて、綺麗な感じ。

白のマッチングヘッド。
リフされているのでボディより綺麗な状態。

値段が安かった理由として、ヘッドがリフィニッシュされていた。
ヘッドトップはロゴが一度剥げたのか、元の塗装の上からもう一度ホワイトを吹いてロゴのデカールが貼り直されている。ボディと比べても塗装が綺麗で光沢もしっかりしているので、ここ数年でリフされたのが直感的に分かった。

問題は、恐らくネック裏もオーバーラッカーされていること。このオーバーラッカーがはっきり言って下手くそで、塗装の厚みにムラがあるうえにベトベトした質感になっていた。これは見た目的な意味でもオールドの楽器としてはかなりマイナスポイントだし、弾いている最中に気になる部分なので、プライスダウンの理由をなんとなく理解した。(このネック裏は、結局購入したあとにサンドペーパーで全部サンディングした)

他の変更点はペグのバックギアを止めるネジが2本交換されていること、ヘッド裏のストラップピンが欠品していること、フレットとナットは新しくしたばかりということだった。しかし肝心のPUやブリッジ、その他の部分はオリジナルとのこと。楽器として使うには、まったく問題ない。(こだわりはないが、なるべくオリジナルだとうれしい)

楽器屋にあったアンペグのB-15に繋いで鳴らしてみると、まずネックの握りがとてもしっっくり来た。幅は細めながら、厚みが適度にあり、テーパーがきつくないままハイポジションまで広がっている、自分が一番好きなネックシェイプだ。(65年前後のネックシェイプの特徴。60年代初頭は少しテーパーが強くネックも薄い)弦高が高めにセッティングされていたけれど、弾きやすかった。

音はパッシブなのにしっかりローが出ているというか、4弦を鳴らすとブルンとした質量感のある低音がしっかり出る。最初の1音でビビっときた感じはなかったけど、弾いているうちにこれが一番の特徴だなと思った。実際の振動分よりも更にローが増して出てくるっていうか。出力もちょっと大きい気がする。パンチーな音だと思った。

後々に色んなジャズベースを弾いて分かったんだけど、このローの質量感がオールドFenderの特徴だということ。

カスタムショップの有名ビルダーが作ったすんごく高いジャズベや、日本製のオールドに似せた楽器もたくさん試したけど、これに近いニュアンスが得られる楽器はなかった。ほんの些細な部分だけれど、何か特別なものを感じた。

結局その日は買うかどうか決められなくて、家に帰った。
それから丸2週間ほど悩んでいて、どーしてもあのネックの感触とか音が忘れられなくて、仕事している最中にもあのジャズベのことがちらつく…という日々が続いた。楽器屋で撮影した写真をぼーっと眺めたりとか(笑)。
あの独特なトーンが頭からなんとなく離れなくて…そのうち「これはきっとあの楽器を買えって天命なんだな」と思うことにし、購入を決意した。
もちろん何も元手無しに買えるようなものじゃなかったので今までメインで使ってたベース2本と、ギターを1本売った。このチャンスを逃したらオールドを買う機会が二度とない気がして。でも実際良い買い物だったと思う。

ある程度弾き込んで気づいたのが、ピック弾きとの相性が特に良い。
何というか、これも言葉じゃ説明できないんだけど低音がズンズン来る音。ピック弾きはアタック成分が強く出る分、うまく弦を巻き込むような弾き方をしないと低音が出てくれない場合が多いんだけど、これは何というかいい加減な弾き方をしてもローがたっぷり出る。ピック弾きは20代になってから殆どしなくなっていたんだけど…このベースがメインになってから心地よくて沢山練習するようになった。

自分は器用に色んな楽器を使い分けるタイプじゃないから、いまはずーっとこの楽器ばかり使っている。5弦が必要なときはTinyFlowerを使うけれども、基本はこのジャズベ。たぶん壊れるまでずっと弾き続けるんじゃないかなと思う。

そんな感じなので、長い付き合いになりそうです。

・ ・ ・ ・ ・

2021.12追記

購入から5年以上経って、いまはより使い込まれた風貌になっている。

2021.9月頃の姿


依然変わりなく、レコーディングではメインの楽器となっているし、状態も大きく変化することなく安定している。

ピックアップ横のクッションゴムは買ってすぐに貼ったもの。これがあるだけで演奏性が格段に上がり、ピッキングポジションの自由度も上がる。自分は手持ちのほぼすべての楽器にこのクッションゴムを貼っている。

オールドの楽器だとしても、弾きにくくては意味がないので演奏性を最優先している。



・ ・ ・ ・ ・

以下、忘備録として。

ネックデイトは7 JAN 66A
7というのはジャズベースを示すモデル番号で、JANはJanuary。AはAネック(細いネック。プレシジョンはC)つまり66年の1月に製造されたものだと分かる。バインディングが付いた最初期のもので、限りなく65年製に近い66年という感じだ。ポットやPUは全部オリジナルだから、そのデイトを見ても66年の初頭に作られて半ばぐらいに出荷されたものだと分かる。50年前の楽器がいま手元にあるのだから、なんだか不思議な感じ。


ネックデイト / "7 JAN 66 A"
ピックアップ・デイト / "6-7-66"、リア "6-9-66"
ポット・デイト / "3046618" 
シリアルナンバー / 139048

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