前回の話>>僕とハナムラ楽器 序章
ハナムラ楽器に初めて足を運んでから数年が経ち、直接訪れることはなくともその関心が途絶えることのなかった僕はハナムラ楽器のホームページを定期的にチェックしていた。
時系列はここでつい最近になる。
年号が令和に変わってまだ間もない頃、アップされたとある楽器の写真をみつける。
それは美しい青色のプレシジョン型のベースだった。
楽器の説明にはこうあった。
アッシュ単板一枚板のPJ型ベースです。
あまりにも重いので、減量の為に裏から1cmほど、掘りぬいて、裏にアッシュ単板一枚板を貼って、あります。一応フルアコになってます、したがってものすごい低音がでます。
特にトーンを絞った時には、ほんとに、もこもこの、柔らかい音が得られます。
色は、知り合いの庭師さんに、頼んでカキツバタの花を、もらって来て、染料や、酒を混ぜて、草木染めにしました。
フルアコ(ホロウボディー)という部分と、カキツバタの花で染めたという部分が琴線に触れた。
一体どのような音がするのか……。
とにかく音が気になって仕方がないので、さっそく明大前に向かうことにした。
・ ・ ・ ・ ・
久々に訪れたハナムラ楽器は数年経っても変わっていなかった!笑
既に80歳を超えている花村さんだが、まったく変わりなく、むしろ元気になっているようにも思える…。
さっそく、例の青いベースを試したいことを伝え、試奏させてもらう。
この青の深みが写真で伝わらないのが残念 |
構えてみると、フルアコで内部が空洞とはいえ、膝の上がずっしりと重たかった。
アンプにケーブルを繋いでもらい、音を出す。
……すごい、地を這うような、重い低音が出ている。
FenderのオールドPBがブリっとした音色だとすると、こっちはドゴーン!と唸る感じ。
パッシブとは思えない重低音だ。アクティブベースでローブーストしたのかと錯覚する。これがフルアコ構造によるものなのか、この重たい単板アッシュ材によるものなのかは分からないが……。
花村さん特有のサスティーンの長さはもちろん健在だが、音のインパクトは以前弾かせてもらったジャズベースとは比べ物にならない。唯一無二の音色。
PJベースと謳っているが、厳密に言うと、フロントにシングルコイルを足したJPタイプといったほうが正しいかも。だけど、Pタイプのピックアップが強力すぎるので、フロントの出番が全然ない!笑 そしてこのPピックアップはハナムラ楽器に40年ほど眠っていたもので、メーカーや製造元も不明といういわくつきのものらしい…。
PJというよりは、JP配列だ |
凄まじい体験をして、興奮状態のまま考える。
もしや、今が花村さんの楽器を手に入れるタイミングなのではないか……?
ちょうど今メインで使っている66年製ジャズベースはややブライトで明るめの音色で、次にプレシジョンを買うときは、太く重い音が出るモノがほしいと考えていた。
なので、“音”という部分だけでいえばこの楽器はピッタリだ。
見た目も初夏の花であるカキツバタで美しく染まっている。
ただ冷静になってみると、普段メインで使う楽器としてはこいつはちょっと重量が重い。あとPピックアップは強力なんだけど、フロントのJはたぶん全く使わない気がする……。あと見た目ももうちょっとFenderに近い風貌のほうが好きだ。
ならば、このベースとほぼ同じ仕様で、オリジナルの1本を作ってもらえばいいのではないか。
ただ気がかりなのは色だ。同じ色がまた出せるか。琴線に触れたのは、音と色だから重要だ。
さっそく花村さんに訊いてみる。
「花村さん、この楽器に使ったカキツバタの染料、まだありますか?」
「ある!あと一本ぶんだけあるよ!」
あと1本だけ使えるらしい。これで心が決まった。
とびきり良い材を使い、花村さんに最高の楽器を作ってもらおう。
作るのは、見た目は王道だが、フルアコ構造のプレシジョンベース。
それをカキツバタの花で青く染める。
その場でほぼすべてのアイデア決め、花村さんに託した(つづく
0 件のコメント:
コメントを投稿