2018年6月12日火曜日

コードで考えるメロディーの構築術

音楽レッスン出張のエントリです。(内容的には中級編)

グッと来る良いメロディーを作れるか、というのは音楽を作るうえで避けて通れぬ命題ですが、閃きに頼るだけではなくある程度方法論で構築してみようというのが今回の題材です。

もちろん前提条件としてメロディー単体だけではそれが優れているかどうかは評価できません。裏で鳴っているコードとの合理性がなくては良いメロディーにはならないからです。




普段曲を作っている人は、適当なダイアトニック・コードを鳴らしながらとりあえず歌ったり乗っけてみたりしたメロディーがしっくり来ない……ということがよくあったりしませんか? そういった場合は大抵バッキングで鳴っているコードに対してメロディーの音使いがうまく乗っていないパターンです。しかし音選びのコツや、メロディーの構築方法を一度理解すれば、心地いいサウンドへブラッシュアップさせるのはそう難しいことではありません。

言葉だけでは伝わり難いと思うので実際の曲を例にその中でメロディーとコードの関係性を探ってみます。今回の例で使うのはLaqsheの『揺れ動く』という曲です。(著作権的に他所の曲は使えないので…)まず、サビを聴いてみましょう。



サビ前半のメロディーとコードを簡単に譜面で示しました。
キーはEメジャーです。リズムは3/4っぽくも聴こえますが6/8で解釈しています。




コード進行は少しテンションが加わった部分もありますが基本がダイアトニックコードなので複雑な部分はないと思います。(2小節目はバラードでよく使われるIVのマイナーメジャーですね!)

注視してもらいたいのは赤丸で囲った部分で、いわゆるメロディーの中でも小節内でアクセントになっている部分です。更にその音がコードトーンで何度の音になっているかも赤字で書き表しました。ほぼすべてのアクセントでコードの構成音を通過しているのが分かりますか? しかもそのほとんどが3度か7度になっています。これが基本です。より強くメロディーを聴かせたい部分は3度か7度を使い、より演出力を高めるという非常にオーソドックスな手法ですが、徹底すると効果的です。

まず1小節目、2小節目はルートが同じIVのコードが続きますが、それに対して同じ長7度の音を連続で使うことで反復の印象を強めています。3小節目も最初の1音に短7度の音を持ってきていますが、ポイントは2小節目とメロディーを同じ譜割りにしているところです。これによりゆったりとした並行感を得ています。

次の4小節目はトニックのVIm7ですが、小節頭の音はコードトーンではなくテンションノートの11度です。これがフックになります。その直後の4分音符は短3度になっているのでここで一度メロディーをトニックに着地させて安定感を出しています。譜割りもシンコペーションを使うことで前の3小節で出したゆったりとした流れからスピード感を出して切り替えています。

5小節目の頭も9度を使ってテンション感を出していますが、その直後は短7度に落ち着くことでしっかりとコード感の出るメロディーになっています。6小節目はここもIIIm7>III7とルートが同じコードが続きますが1,2小節目と同じく続けて7度の音を繰り返しています。

7小節目は4小節目と同じVIm7ですがここも同じく11度>短3度とテンションを印象づける音使いになっていますね。ちなみにメロディーではないですが、最後の8小節目はIVM7に戻るためのセカンダリー・ドミナントなっていて、バッキングのトップノートが短7度と短3度でしっかりと鳴っています。(原曲参照)

・・・

さっと聴き流してしまうようなひとつのメロディーにこういった様々な工夫が仕込まていることが何となく理解できたのではないかと思います。こういった些細な音使いの積み重ねでキャッチーなメロディーが出来上がっていきます。特に曲の顔であるサビ(コーラス)では一番聴かせたい部分でメロディーがコーダルに機能しているかどうか、というのが非常に重要です。

サビのパンチが弱い、メロディーがぐっと来ないという人はまずコードとメロディーの関係性を洗い直してみてください。気をつけて欲しいのはケーデンスで言う所のドミナントからトニックに戻る部分です。ここでコードトーンが踏めていないと不安定感・着地感が出ないのでパッとしません。ルートや5度が多くなりがちな音使いだといわゆるエモーショナルな響きが得られないので注意が必要です。

逆にいえばパッと頭で思いついたメロディーが最高でそれを活かしたい、という場合ならメロに合わせてリハモナイズすればいいだけのことです。うまくメロディーがコードトーンとしてサウンドするような流れになるように再構築します。このメロディーを直すか、コードを直すか、という部分は非常に難しいところではあるのですが繰り返しいろいろな曲を編曲していくうちに修正するポイントが分かってくるので、うまくすり合わせができるようになります。

飽くまでもこれらのテクニックはハーモニー重視での方法論の一種ですし、実際にはこの上にリズムや言葉のトーン(歌詞)の要素が絡んできます。なのでより自分の思った通りの印象で聴き手にイメージを伝えるか……となってくるとよりディープな世界になってきます。そこが音楽(歌もの)の面白さではあるのですが……。


……これより深い話の続きが知りたい人はレッスンで!笑

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