このエントリはアルバム『花揺らぎ、歌巡り』の制作記みたいなものです。
以前からこのブログ「音楽の作り手に読まれてないんじゃないか」みたいな漠然とした危機感がありまして、例えばLaqsheの音楽を好きになってくれた人がどうやって音楽作ってるんだろうとかそういう技法的なところに着目してくれているならば、その為に何か有益な情報でも残してはいけないなと思っていました。
完全に主観的な書き殴りなので、実際に有益かどうかは分かりませんが以下解説といたします。
※飽くまでも音源制作面での解説なので、曲そのものや歌詞などには触れていません
■01 Introduction
文字通りアルバムのイントロダクションとして作った曲。順番どおりにアルバムを聴いていった時に1曲目の歌物の印象が強くなりすぎるのを嫌った節があって、掴みどころのない前菜みたいなトラックを入れようと思いました。
音自体は普通にLogicのサンプラーとBatteryで自前のリズムサンプルを引き伸ばしたりしてノイズっぽいパーカッションにしています(ほぼ全曲で使っている手法)
あと久々にフレットレスベース弾きました。フレットレスっていいよね。
■02 指切り
なんだかんだ言ってLaqsheを再開させる切っ掛けになった曲。
それまでニカやアブストラクトなトラックばかり作っていたので、もうちょっとフィジカルを使ったサウンドの曲が作りたくて、本来得意だった6/8系のリズムに落ち着きました。
デモのときはとにかく地味な曲でパっとしなかったけれど、gomezさんのガットギターが入って空気がガラっと変わった記憶が。
シングル版の音源はピアノがとにかく雑なベタ打ちだったので、ほぼ全編で自分で弾き直しました。それ以外は音のバランスをちょっといじった程度でmix調整の範囲。
ちなみに歌はまだきよの女史の家で宅録してもらった頃の音なのでちょっとサウンドが違います。(でも意外とよく録れているんだよな…)
■03 一雫
個人名義の2枚目のシングルに入れていた曲で、冷たくひんやり、をとにかく意識した曲。
この曲は当時にしては珍しく?曲自体をひと月半くらいかけてじっくりトライ&エラーして作っていくような作り方をしていました。iPhoneのボイスメモでサビのメロディだけ決めておいて、そこにコードを付けてだんだんと前後に展開を継ぎ足していくような作り方だった…気がする。
サビの終わりがドミナント→トニックじゃなくてサブドミナントで引き摺るように終わる感じがお気にい入り。自分IV△7の#11thっていうテンションが大好きなんですよ。
音作りは『指切り』のときとは逆で、あまり有機的というか単なるバンド・サウンドにはしないようにしていて、無機質なリズムの上に歌や楽器が乗る…という感じで有機的な部分と無機質な部分が折衷した曲にしたかった。ベースがシンセベースなのもこの曲ぐらいですね。
ノイズ系リズムの制作はbinariaのナガヲさんにお願いして、そこにシンプルなリズムサンプラーを重ねる感じ。ナガヲさんは実際に曲中で鳴っている音以外も沢山素材をくれて、それをこっちで加工して並べている音もあります。なんかナガヲさんありきで空気感はできたような曲です。
アルバム版の調整は結構前から手を入れていて、ピアノの動きとかシーケンスもいじっていたり足されていたり、プリプロで没にしていたサビの裏で鳴っているコーラスが復活していたりと、冷たくも平べったさがなるべくないようにテコ入れしました。
歌の録音:Neumann U87 + UniversalAudio LA610
■04 深縹
自然と弾いていたフレーズが7/8拍子でそれがそのままイントロになりました。
そしてレコーディングの3日前くらいにギリギリで出来た曲…。
色々な奇跡のテイクがあったりする…(遠い目)
『一雫』の対になる曲だったので、シーケンスで刻む落ち着いた曲ではなくて少し攻撃的な側面も出しつつ…みたいなのを意識していたような気がする。
曲自体は同じ6/8の『指切り』と似ないようにちょっと毛色の違う音色がちょくちょく出てきたり、オルガンやeffectrixのスライスを多用しています。
曲の展開が二番サビ終わり>間奏>ブリッジでエンディングというちょっと珍しい展開。
キーもアルバム収録曲の中では一番低いG#mなので、メロディの組み方はちょっと悩みました。
アルバム再録にあたって一番変化した曲。
7/8拍子部分のアルペジオがピアノとベースのリフになって更にザクザクと刻み込むようなアレンジに変更。ギターもカッティングをダビングしました。(さわちかのギターがいい仕事してくれました)実は裏でダブっぽいエレピが鳴っていたり…。
歌の録音:Neumann U87 + UniversalAudio LA610
■05 揺れ動く
聴き返してみると、ここ何年かで一番良く出来た曲。
Laqshe節が一番全開なのはこの曲なんじゃないかなあと。
これを書いてるときは〆切まで時間がないせいもあって精神的にも肉体的にも限界ギリギリで、歌録り終わってもこの曲で勝負できるかどうかジャッジできないくらい疲れていて、もう滅茶苦茶だったのを今でも覚えています…。
恒例の6/8拍子だけれど、冷たさの奥に柔らかさがあるような、リニアな音像の奥に揺らぎがあるようなそういうアブストラクトな音だけれどポップさもあるような部分が表現したくて今までの手法を全部つぎ込みました。やっぱりLaqsheの音ってモジュレーションだなあと。
楽器隊の編成はシンプルにギターピアノベースドラムですが、各トラックの音像を微妙にいじったりモジュレーションかけたり、ダブっぽいディレイの飛ばし方したりして単純なバンドアンサンブルにならないようにあれやこれややってます。(色々やり過ぎて具体的に何やったか逆に覚えてないっていう)
DIも使わずAD直で録ったベースが意外と良い音で録れていたことにあとで気づくなど。
歌の録音:Blue Bottle + Neve3415
■06 三季巡り
アルバム合わせで作った新曲。
曲自体は既に1年以上前から出来ていて、アレンジと歌詞を放置していたので年明けにやっと歌録れたとかそういう感じの流れ…。
AB形式のシンプルなザ・マイナー曲がやりたかった。
ドラムとベース、ギターはいつもの自前サンプルで淡々と。
ドラムとベース、ギターはいつもの自前サンプルで淡々と。
雰囲気的にはあとで弦をちゃんと入れるか〜と思ってましたが、代わりにサビにコーラスの素材を4声入れたら落ち着いてしまったのでそのままになった流れ。
歌の録音:GrooveTubes 1B-FET + GrooveTubes the Brick
■07 斜め読みの日常
本来は『揺れ動く』とセットの箸休め曲。
個人的に一番気に入っている曲だったりします。
出だしのメロディが13度、#11度で始まるというちょっとトリッキーなメロディで歌うのが難しいんだけどよく歌ってくれました。(キーもFメジャーで高いので歌いにくい)
珍しくエレピ(フェンダーローズ)を自分で弾いた曲。
珍しくエレピ(フェンダーローズ)を自分で弾いた曲。
■08 金魚掬い
Laqsheの攻撃面を真っ先に提示すべく作った曲。
イントロから攻め攻めという感じでとにかく最初の数秒で印象付けようと思って作ったのがイントロのリフ。曲自体も8分のシンコペーションが多くてドスドス前に来る感じに。
音作りは以前の曲よりもちょい低音強め倍音少なめみたいな感じで、ヴォーカルの定位を広げたりステレオディレイはこのあたりからあまり使わなくなりました。録音も歌はオールドのU87とNeveで録ったのでふくよかさはあるけどエッジのジリジリ感があまり出なかったので、もうちょっとモダンなマイクで録ればよかったかなというのが心残り。
エンディングのギターソロがまさにノスタルジックというテイクなのも良し!(さわちかありがとう)
歌の録音:Neumann U87 + Neve3415
■09 祝い花
『硝子の海』に繋ぐための曲。
4/3から4/4へ。
■10 硝子の海
アルバムの最後を飾るべく作った曲。
他の曲がBPM早めのがあまりなかったのでテンポ早めで…というのだけ決めて取り掛かりました。
レコーディングの前日になって曲そのものがなんとなく気に食わないという理由で、一度目のデモは没にし1週間で再度作りなおしたのがこの曲です。毎度こんなことをやっている訳ではありません(震え声)
サビ頭が4小節同じコードというLaqsheだと珍しい展開の仕方で、ドミナントを強調することなくスルっと解決するようなコード進行を使ってます。VIm7からの半音進行はちょっとポップすぎるかなあと思いつつ音色がうちだとうちらしい音だということでアンサンブル的にはOKということに。
音は全然ダビングしたりしていなくてトラック数も少なめなシンプルなアレンジ。その代わりサビの後ろで聴こえるか聴こえないかっていうぐらい小さめにリバーブを特盛りにしたギターを3本くらい重ねています。
エンディングでベースがアルペジオ的なフレーズを弾く所は坂本真綾さんの『マメシバ』でベースを弾いている渡辺等さんへのリスペクトです……。
サビ頭が4小節同じコードというLaqsheだと珍しい展開の仕方で、ドミナントを強調することなくスルっと解決するようなコード進行を使ってます。VIm7からの半音進行はちょっとポップすぎるかなあと思いつつ音色がうちだとうちらしい音だということでアンサンブル的にはOKということに。
音は全然ダビングしたりしていなくてトラック数も少なめなシンプルなアレンジ。その代わりサビの後ろで聴こえるか聴こえないかっていうぐらい小さめにリバーブを特盛りにしたギターを3本くらい重ねています。
エンディングでベースがアルペジオ的なフレーズを弾く所は坂本真綾さんの『マメシバ』でベースを弾いている渡辺等さんへのリスペクトです……。
歌の録音:AudioTechnica4050 + Neve3415
まあこんなところでしょうか。
2人でのライナーノーツはそのうちにでも。
まあこんなところでしょうか。
2人でのライナーノーツはそのうちにでも。
CD聞きました、良い音ですね
返信削除お手にとって頂きありがとうございます。
返信削除更に心地よい音を目指して次もまた頑張りたいと思っております。
先日のM3でこちらを購入しました。
返信削除祝い花の最後が唐突にプツッと終わって1、2秒空き、硝子の海にも繋がっていない
ようなのですが、これで正しいでしょうか?
CDを購入して頂きありがとうございます。
削除音源ですが、そういう仕様になっています。
わかりづらくてすいません。