KLARK TEKNIK KT-2A 下はNeve3415 |
KT-2Aというコンプレッサーを買った。もちろんジャンクで。
KLARK TEKNIK(クラークテニック)というPAブランドもので、すでに生産終了品。
見た目の通り、オプトコンプの名機Teletronix LA-2Aのクローンです。
KT-2AはLA-2Aと同じく光学素子にT4Bというフォトセルを使います。プリアンプやサイドチェイン回路は廉価品ながらオール真空管構成。オリジナルはともかく現行のUniversal Audioから出ているリプロダクトLA-2Aもお値段70万以上となかなか高額なギアですが、こいつは中国製で目一杯コストダウンしているので定価の時点で1/10の値段です。今回ジャンクで買ったので1/20くらいのコスト。
ちなみに同じチャイナ製だと今はWarm AudioがWA-2Aというクローンを出しており、現状安価で手に入るLA-2Aクローンはこれくらいです。安価といっても10〜12万円くらいしますが、内部を見る限りKT-2Aよりは明らかにコストが掛かっている感じです。(後述)
中身もちょっと見てみましょう。改造前提みたいなところあるしね。
中身は割とスカスカ |
筐体は奥行きが20cmもないコンパクトな2Uラックサイズです。コンポーネントは筐体の左側のほうに集中していて、その右側はスカスカなのが分かります。
まず内部がミニマムな構成になっている理由のひとつがスイッチング電源の採用です。これひとつでB+電源とヒーター電源ふたつを供給できるようになっています。
電源基板と背面の入出力基板は完全に一体化しており、背面パネルにポン付けできるようになっています。ケースにメイン基板と電源基板だけ組み込めばほぼ完成されるようなアッセンブリーになっており、かなり作業コストダウンになっていると思われます。
先述のWA-2AはこのKT-2Aと違ってトランスを使ったリニア電源です。このあたりのコストがそのまま価格差に出ている感じですね。
メイン基板とトランス |
メイン基板部分には、真空管ソケットに刺さった真空管とフォトセルが並びます。LA-2Aのオリジナル回路の部分はほぼここに集積されています。基板上の部品は一部の大きな電解コンデンサを除いて殆ど面実装部品になっていて、ここでコンパクト化とコストダウンが同時に図られているのが分かります。ぱっと見ですが回路そのものははオリジナルのLA-2Aに準じているようです。
真空管はBugera(ベリンガーの関連会社)ブランドで『Selected』って書いてあるけど中身はたぶん中国製の廉価品ですね。期待はしません。
使われている真空管は12AX7が2本、EL84(6BQ5)と12BH7が1本ずつ。合計4本。そのうち、音声回路に使われているのは12AX7の片方と12BH7なので、この部分の真空管を交換することで音質の改善などはできそうです。
入出力トランスにはミキサーメーカーのMIDASのシールが貼られています。たぶんOEMなので製造元は同じ中国だとは思いますが、質は特に悪そうには見えません。ちなみにWA-2Aは米国Cinemagのトランスです。
中身を観察して統括すると、オリジナルのLA-2Aをほぼ完コピしつつ、部品のグレードや電源のコストを落とすことでリーズナブルなLA-2Aを作った、といった感じです。
ジャンク部分は息を吸うように直したので、音のほうもチェックしてみましょう。
フワっと効き、リリースも緩やかなオプトコンプらしい音色です。
サイドチェインの送り(PEAK REDUCTION)をゼロにしても、プリアンプのソフトな質感が付与されるような印象があります。
アタックリリースは完全固定なので1176のような高速リリースでバチっとした音作りには向きませんが、ヴォーカルとかアコースティック楽器を録音するぶんにはこれ1台で十分な感じ。操作に迷いがなく使いやすい。自作したU47との組み合わせでは、ハイエンドがサラっとしつつスムースな質感になり、リッチな音色になります。
オリジナルには無いサイドチェインのローカット(プリエンファシス)が調整できるのもいいところ。
大幅にコストカットされた構造を持つものの、回路自体はLA-2Aのオリジナルを踏襲したもので、音自体のクオリティは十分なものだと思いました。
普通に収録で使っていこうと思います。時間ができたら電源やフォトセルなどのMODなどもやっていきたいです。
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