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2025年1月28日火曜日

雑なコントラバスのサイズについて

自分の楽器、Gliga Genial 1/4

コントラバスは同じ弦楽器のヴァイオリン、ヴィオラ、チェロとはルーツが異なり(ヴィオール属)、そのデザインや規格は製作者やメーカーによって現代に至るまでかなりバラバラです。特に大きさについても、統一性のある規格はほぼなく多種多様なものが散在しているのが現状。

そのあたりの資料というか話がちゃんとまとまっている情報がネット上でほぼ皆無だったので、忘備録をかねてコントラバスのサイズについて色々と書いてみたいと思います。



分数サイズについて

ヴァイオリンと同じく、コントラバスの大きさは4/4、3/4、1/2などの分数サイズで示されることが多いです。

ただ分数といっても4/4等の数字に対して実際にその分数通りの大きさになっている訳ではありません。(1/2で半分のサイズになったら別物の楽器だからね)

更にややこしいのが国際分数サイズと日本独自の分数サイズで規格が異なっており、国際サイズの3/4が日本の4/4です。つまり、日本のサイズの場合は分数サイズでひとまわり小さい、ということです。現存する日本で唯一のコントラバスメーカー、オリエンテではこの国内分数の表記を使っています。

ただこれもざっくりとした分類で、分数サイズと弦長などは完全に比例はしません。楽器そのもののデザインや構造に弦長は大きく影響されるからです。このあたりはほぼ形状が同じ形で作られるヴァイオリン属とは全く異なります。

つまりコントラバスの規格って、すごくテキトーで雑なんですね。(日本の神様かよ!)

分数サイズと弦長のおおまかな関係といってもある程度は比例するので、ざっくりまとめてみます。


4/4サイズ(フルサイズ)

いわゆるフルサイズとよばれる楽器です。楽器自体は非常に大きく、全長(底面からスクロールの先まで)190cm近くあるものが多く、ボディは縦長のものが多いです。

弦長は107〜110cmくらいが多いと思います。オールドの楽器だともっと長いものもありますが、左手のストレッチが相当にきつくなるため、新作の楽器だとボディが4/4相当でも弦長は少し短めに作られているものもあります。

楽器自体が大きいので生音も大きく迫力のある音が出ます。が、日本人だと要求される体格に合う人が少ないので、日本ではマイナーな印象です。

ペルマンのでっかいブセットとかはこのサイズ。(大きいやつとスリムな形の2種類あって、大きいほう)


3/4サイズ

おそらく世界でも一番標準的なコントラバスの大きさです。楽器の全長は180〜190cm前後、弦長は103〜106cmほどが基準。

オリエンテの4/4はこのサイズです。

実際のボディの大きさはモデルや意匠によってかなり差があり、弦長に対して小ぶりなものもあれば、グリガのヴァイオリンシェイプのように縦長のボディで4/4に近い(7/8ともよばれる)サイズのものもある。

楽器の数としてはこのサイズが一番多いと思いますが、ネックのジョイント位置、ボディ自体の高さ、アッパーバウツの幅などで演奏性はまったく異なるので、演奏者の感覚によっては3/4でも小さく感じる楽器もあれば大きく感じる楽器もあります。(ソリストが好むなで肩の楽器は小さく感じやすい)


1/2サイズ

3/4よりも一回り小ぶりなサイズで、全長は170cm前後、弦長は95〜100cmくらいです。

このサイズより小さいサイズは原則的に量産品以外ではほぼ作られることがありません。オールドの名器でもまれに1/2サイズの小さいものがありますが、数は少なく希少です。

オリエンテの3/4はおおむねこのサイズ。

ボディサイズが少し小さくなるので生音も小さくなりますが、弦長が短くなった分、左手はだいぶ楽になります。日本人は個人的にこのサイズが最適ではないかなと感じています。小柄な人や女性はまずこのサイズで練習して挫折しないか試したほうがいいと思います。


1/4サイズ

一般的に流通している楽器のなかでは一番小さいサイズです。子供の練習用に作られている合板楽器などはこのサイズであることが多い。

全長は160cm前後。弦長は90〜95cmくらい。エレキベースだとだいたい36インチのスーパーロングスケールくらいの弦長です。エレキベース使いの人はスムーズに移行できるサイズです。

自分が使っているのもこのサイズですね。(グリガ Genial Violin 1/4)

弾くのはすごく楽だし、生音も十分出るけれど、問題はこのサイズでクオリティの高い楽器を探すのはかなり難しいということ。

オール単板かつ1/4サイズの楽器となると選択肢がオリエンテのHB-40と、グリガGenialしかほぼ無いといってもいいかもしれません。(逆にグリガは値段そこそこでフルサイズ、3/4、1/2、1/4と単板の良い楽器がラインナップされていて選択肢が豊富。ルーマニア万歳)


その他のサイズ

4/4/より僅かに小さい7/8や、3/4より僅かに小さい5/8サイズなども存在しますが、これといった定義はなくあやふやです。


更に小さいサイズだと、1/8や1/10というサイズもあるのを確認しました。主にヨーロッパで小さな子供が入門用として使うようなエントリーモデルとして存在するもので、大きさはほぼ4/4チェロと同じくらい。座ったままエンドピンを立てて弾けるので、4度チューニングしたチェロといっても過言ではなさそうです。


まとめ

このように分数サイズはざっくり振り分けられているものの、実態としてはざっくりとした区分でしかなく、演奏性やサイズ感は実際の楽器を触ってみないと分からないものが多い。

小さいサイズのコントラバスについての是非はまた別のエントリで深く掘って書いてみようと思います。

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